中3のときだった。
俺は白石と体の関係を持ってしまったのは。酔った勢いだった、ということだけでは済まないということは分かっていた。だが、そうやって言わないと逃げれなかったんだ。
中3の頃、俺は白石に好意を持っていた。友情ではなく愛情の方の。叶わないと思っていたし、いつも一緒にいられる親友ポジションだけでも充分だった。というのは嘘だ。前者は本気で思っていたが、後者は違う。ほんとは、もっと触れたかったし、もっと知りたかった。恋人にしか見せないであろう白石のことを。だが俺は男で、相手も男だ。それは天地がひっくり返っても変わらない。俺はずっと白石の友人だ。
そんな日が続いたある日のことだった、両親がいない日にお酒を勝手に拝借して飲まないかと誘ってみた。真面目な白石のことだから断ると思ったが、案外乗り気で何本かお酒を持ってきてくれた。飲み方を知っていた白石は俺にチューハイを進めてきた。甘い、だけど少し苦味がある、そんな癖のある味わいに虜になってしまい調子にノって何本も飲んだ。
すぐにほろ酔いになった。ぐらぐらとする視界の中で白石を捉えた。
近い。
抱きついたい。
キスしたい。
お酒の力は本当にすごい。
それを勢いで実行してしまったのだから。
ゆっくりと手を伸ばし抱きつけば全く抵抗をしなくて、おかしいなと思いつつキスを落とした。始めてだった。その為、啄むようなキスしかできなかった。
数回すると後頭部にスッと手が伸びてきて押されるがまま、そのまま深い口付けへと。アルコールの匂いが鼻をつついたが、至近距離から香る白石の匂いに陶酔していた。
フと背中に違和感を感じ、横目でチラリと覗くと白石の手がゆるゆると腰を撫でていた。
白石も酔っぱらったのか。
このまま、最後まで酔いのせいにしてやってしまってもいいだろうか。
最低だった。自分は最低最悪の人間だった。酔いが冷めた頃には、罪悪感と後悔しか襲ってこなかった。
所々飛んだ記憶、隣で眠る親友。なんてことをしてしまったんのだろうか自分は。
それ以降、白石に合わせる顔はなく、卒業までの残りの数ヶ月は殆ど喋ることはなかった。卒業し、別々の高校へ行き、全てが忘れられると思ったが、全く忘れることなどできなかった。いつしか、その事事態を無かったことにしようとまで思い始めていた。そんな、矢先に開かれた飲み会。変わってしまった薬指を見るたびにズキリと心臓が痛むのは気のせいではなかった。