引っ張られるがまま連れていかれた場所は、部室。一昨日のことが、一瞬でフラッシュバックして思わず歩を止めるが、抵抗虚しく部室の中へと放り込まれる。放り込まれた衝撃で床に手足を擦り付けビリッと鋭い痛みが走る。
「…な…んやねん」
声が震える。相手の顔を見れない。相手の足元を見て無意味だが精一杯の威嚇を張る。フと影が落ちてくるのが見えて近づいてくることを直感した。それに反応するように体をズリッと引き摺りながら後ろへと逃がそうとするが、ガンッとアルミ製のロッカーに当たる音が聞こえて思わず身を縮込ませる。この光景は、一昨日とまるで一緒ではないか。脳内で警報がガンガンなる。だが強張って足が動かない。
スッと延びてきた手から逃げようとするが呆気なく右腕を取られた。何をされるのか分からないまま右腕はゆるりと白石の元へと引っ張られる。次の行為に思わず目を丸くした。
「…いっ…た…!」
生暖かい舌がベロリと右手のひらを舐めた。舐めた場所は先ほど転けたときに俺が擦った所。抵抗をすると、今回は案外簡単に手を離した。何をしたいのか分からない。次の瞬間、前触れなく噛みつくようなキスをされる。
「…っん……!」
白石の手が服の中へと入ってくる、もぞもぞと探るような手つきに身を捩ると、動きをとらせないように足の間へ太股が割って入る。
抵抗する気力も殆ど残されていなかった。長く深い口付けに完全に酔いしれていた。リップ音を鳴らしゆっくり唇が離れる。視線がぶつかる。
──謙也、
甘ったる声と、欲情の瞳が俺を捕えた。
逃げれない。
ぼんやりとする視界の中でそれだけは理解できた。