完全に俺の不注意だった。後方から飛んでくるボールに気づかずボコンと鈍い音を立てて頭に激突し、ベンチに向かって盛大に転けた。
謙也、ごめん〜!とゴンタクレの声が聞こえてきて、金ちゃんのボール当たって生きてる自分は凄いなとズキズキと痛む頭を押さえて感心した。
頭を上げると、ユウジの焦った声や小春の奇声が聞こえてきた。何事かと思い、視線を落とすとポタリポタリと赤い血溜まりが出来ていた。それが頭からの出血だと気づいたのは、白石に腕を捕まれてから。

「タオルと氷水!!早く!!!」

焦る声がどこか鮮明に聞こえた。視線を上げると今にも泣きだしそうな顔で俺の様子を伺う白石と目があった。

(なんちゅー顔すんねん…)

その数瞬後に視界が真っ暗になった。






目を覚ましたときに感じたのは、頭の痛みと手のひらに感じる温もり。

「白石…」
「目、覚めました?」

コクりと首を縦に振ると、良かった、と安堵の声を漏らした。
身体を起こし辺りを見回すと保健室独特の匂いが鼻をくすぐった。今、自分は保健室のベッドの上で寝かされているのか。

「謙也さん、頭痛くないですか」
「痛いけど、大丈夫…」
「そう、ですか」

優しく微笑まれて、またドクリと心臓が跳ねる。しかし、次の行動に一瞬にして顔が青ざめる。ドサリとベッドに身体が沈む。

「なんやろ…この体勢は…」
「押し倒しとんやないんですかね?」

いや、聞かれても困る。
視線が目の前の男を捕えようとせず、あっちへこっちへ泳ぐ。それに気づいたのか、ズイッと顔が近づいてきて嫌でも目線を合わせられる格好になる。少し動いただけで唇が触れてしまうくらい近くに。
止めてくれ。ドクドクと心臓が張り裂けるのでは無いかというくらい活発に跳ねる。

「謙也さん、俺のこと嫌いやろ?」
「…へ?」
「やって、俺が一世一大の大決心で告白したのに……逃げるし」
「あ、いやあれは…」

雰囲気に流されそうになって全力で逃げたなんて、この状況では口が裂けても言えなかった。
顔が離れて、眉尻を下げて悲しそうな顔で俺の顔を覗いていた。

「俺のこと嫌い?」
「いや、嫌いやないけど…」

パアッと顔を明るくさせて嬉しそうに笑った。やっぱり綺麗に笑うなと思った。そこで油断してしまった。ニヤリと口角を上げて色気のある笑みを浮かべた。

「俺は謙也さんのこと」

愛しとる

甘い低音が脳を痺れさす。ずるい、と思う。見惚れるほど綺麗に笑う笑顔とか、甘い誘惑とか、こいつは自分の武器を理解しきってる。こんなことされたら誰だって惚れてしまうに決まっている。

「謙也、俺のこと好き?」
「好…き、」

おおきに、そう言って笑う姿にまたドクリと心臓が大きく跳ねる。



全国のこいつのファンの皆さん、白石蔵ノ介はずる賢い奴です。





end










湖都さんに捧げます!
湖都さんにOPENおめでとうございます!!OPEN前からストーカーしててすみません…(^q^)
凄い素敵なリクを頂いて、直ぐ様書きに入ったんですが、かなりリクとずれてしまいました、ほんとすみません><
年下×年上は書いててテンション上がります。またいつかリベンジさせてください!
これからもよろしくお願いいたします!



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