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 ふと夜中に目覚めると隣でもぞもぞと動く気配がする。
 比較的温暖な地域の江東だが、秋ともなると夜はしんと冷える。
 厚手の布団を被っているが、隙間から冷気が忍び込んできて寒い。それで寝苦しいのか、小さく唸るような声を立てて尚香が寝返りを打った。
 微かに開かれた瞳は眠たげで、夢現の区別がつかぬ様子だ。
「眠れぬのですか?」
「……なんだか寒くて。ねえ、ぎゅっとして……」
「……え?」
 いつもは気丈な尚香の甘えるような台詞に、陸遜が驚いて聞き返すと、その声に覚醒したのか尚香の頬がみるみる内に赤くなった。
「ご、ごめん!子供の頃の夢を見てたからつい……」
「構いませんよ」
「あ、ありがとう。って……、え!?」
 尚香が驚きに声をあげる。赤くなった顔を見られたくなくて、陸遜に背を向けた尚香の身体を、陸遜が背中から抱き寄せたのだ。
「……確かにこうすると、温かいですね」
 陸遜が静かに囁くと、尚香は答える代わりに小さく頷いた。
 ただ身を寄せるだけの抱擁は、尚香に温もりだけでなく安心感も齎した。幼い頃に家族に甘えて、身を寄せて眠った日々を思い出す。遠く懐かしく、今も尚香の胸にある忘れられぬ日々だ。
 陸遜に抱きしめられて心まで温もったからか、尚香はいつの間にか眠ってしまった。
 彼女が夢の続きを見られる事を祈りながら、陸遜も尚香を胸に抱いたまま瞳を閉じた。



※アプリ公式の記憶紹介で、練師に「ぎゅっとして」って甘える尚香が衝撃的で書いてしまいました。
 末っ娘だから甘え上手なのかなとか色々想像しちゃいました。公式ありがとう。
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