私の主は、練白龍様。
いつも凛々しい、私の大切な人。
過去が過去なだけに、難しい顔をしている事が多いけど、たまに笑った顔をみると、昔の面影が蘇ってくる。
あなたは知らないだろう。私がどれだけ、あの笑顔に助けられたか。
あの手のぬくもりに、たくさんの言葉の数々に、何度、生きる事への希望を持つことができたか。
「カーラ」
私の名を呼ぶ白龍様の声が、大好きで、微笑む貴方が、愛おしくて。
世界がどんなに変わっても、私の場所は変わりません。
どんな場所にでも、ついていく覚悟はできています。
だから、
「信じて、くださいっ…!」
貴方の敵になることは、絶対にないのだと。
例え貴方が、世界中の人々から後ろ指を差されることになったとしても。
「白龍様…!」
こちらに背を向ける彼の姿が、涙でぼやける
。
誰よりも慣れ親しんだその背中。そして、私の居場所であった左隣には、真っ黒なマギ。
こちらを振り返って、嫌らしい笑みを浮かべた。
お前はもう必要ないんだよ。白龍は、もう俺しかいらねえんだから。
嘲笑うような声が、頭の中でこだました。
「白龍様!白龍様!!」
声の限り叫んでも、足取りは止まらない。遅くなるどころか、どんどん早足になるだけだ。
「お願いです、信じてください!私は…、私は!」
両腕を木の柵に縛られ、泣き叫んでいる私は、なんて無様なのだろうか。
前のめりになりすぎて、手首に麻糸が食い込む。ぎしりと、柵が鳴った。
「一生、貴方様の味方です!」
この声は届いただろうか。
きっと、届いてはいないのだろう。
何度言えば、この言葉を信じてもらえるのだろうか。
何度叫べば、この言葉は貴方に届く?
「白龍様…」
打ち捨てられた眷属器が、淡く光る。
大丈夫だよね。きっと、また、あの笑顔を見れますよね?
不器用で、泣き虫で、真っ直ぐで、姉思いの白龍様。
私の大切な、唯一の主。
貴方に届くまで、いくらでも叫びつづけましょう。
貴方に信じて貰えるまで、いくらでも言い続けます。
白龍様、私は貴方の味方です。
一生、何があっても。
この気持ちは、変わらない。