おはようございます。今日も朝からいいお天気ですね。お日様がポカポカと暖かくて、とても幸せな気分です。

そしてそれは、きっと目の前で寝ている赤毛の青年も同じなのでしょう。とても幸せな寝顔。お供のパパゴラス鳥さんたちも起こすなと言っているし、私もできればそっとしておいてあげたいのですが……


「――!――?」


風に乗って、彼を探す声が届いてきました。ここで起こしてさし上げなければ遅刻はほぼ確定。致し方ありません。


『マスルール様、お目覚めください』

『朝議に遅れてしまいます』

『いいのですか?ジャーファル様に怒られても』


各々が持てる力の限り全力で揺さぶった結果、マスルール様の眉がピクリと動きました。あともう一息です。


『マスルール様、マスルール様』

『お目覚めくださいな、マスルール様』

「ん……はっ、しまった、朝議…」


やっと目覚めてくださいました。毎朝毎朝、手のかかることです。しかし、それは私達にとって一番の幸せな時間でもあるのです。


「お前たちが起こしてくれたのか…ありがとな」


大きな大きな手で頭を撫でられて、幸せすぎて目が回りそうです。周りにいる仲間たちは羨ましそうにこちらを見ています。私は緩んだ頬が戻りません。

今日は、どんなに幸福な一日になることでしょう。


「そろそろ行くか……じゃあな」


王宮から聞こえる大鐘の音、それが私達の別れの合図です。


『本日もお勤め、頑張ってくださいませ』

「ミュー。ミ!」


例えこの気持ちが届かなくとも、
私の心は、永遠に。


―――――
オラミーの群れの一匹。

獣の恋
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