これは、兄妹という設定なので、苦手な方はお戻りください。
また、この兄妹の禁断の恋(みたいなモチーフだったはず)は、雪夜桜様との共同企画です。素敵なお話が置いてあります。
そして最後に、Re:Яico様、遅れたくせにこんな駄文で申し訳ありませんでしたっ!m(_ _ )m
ものすごい不完全燃焼ですが、それでもokな方はどうぞ!
「おはようございます、ジャーファル」
「ええ。おはようカーラ。今日も相変わらずはしたない格好ですね」
「どっかの無個性よりはマシじゃないですかね?というか、これがはしたなかったらヤムライハはどうなるんですか」
「ヤムライハはいいのです。私の妹がそんな格好をしているというのが問題なのですから」
「うわ、差別。できるお兄様は違いますねえ」
「君と比べたら皆可愛いものですよ」
ああ言えばこう言う。カーラは恨みを込めて目の前の男を睨むが、涼し気な表情のままだ。
「クッソ。アンタなんて大嫌い」
「言葉遣い。気をつけなさい」
うるさい。俺の心はとうの昔に…とかなんとかクサイセリフ言ってたくせに。
ジャーファルに背を向けて歩き出す。後ろでなんか言ってるけど関係ない。
やつ当たりするように青い空を睨んだ。
「ああ、イライラする」
ジャーファルなんて、大嫌い。
◆◇◆
「…ってことがあったんだよシャルゥゥ」
「あー、それは大変でしたねー」
「そう!本当にイライラするの!わかる!?」
「わかりますわかります。だからもう呑むの止めましょう?ね?」
「い・や・だ!!」
取り上げようとするシャルの手から酒瓶を死守。口をつけてそのまま一気に飲み干した。
「うわ。いい飲みっぷりで…」
頬を引き攣らせているシャルルカンに見せつけるようダンッと瓶をおく。
「俺、知りませんよ?そンなに呑んで」
「昔はさー、そんなに仲だって悪くなかったんだからねー?」
むしろ仲はいいほうだった。二人で同じ寝台をつかって寝泊まりして、朝食も昼食も夕食も一緒。時間が合えば休み時間でも一緒にいた。そう、異常なほどに。
だからこそ、あんな妬みとも取れるありがたーい助言を頂いたのだ。
「女官か侍女か…まあどっちでもいいや。王宮の女達がさ、あたしにさ、『ジャーファル様は色々とお忙しい方だから、いい加減開放してあげれば?』とか言ってきたんだよ!そのうえ『なにか間違いがおこっても大変だから』って!なんなんだよ!間違いってなんだよ!バカじゃないの!?」
今ならこうやって真正面から言ってやれるのに、あの頃は自分たちがそんな風に見られてたのかとショックを受けて……同時に、自分がジャーファルのことをそういう風に見ていたことに気づいちゃって…
「だから、嫌われようと思ったんだよ!」
「いや、話の前後が全然見えねぇっスけど」
「でも嫌われたくないよー!」
「言ってることメチャクチャ…」
「うう〜〜」
「カーラさん、泣くほどジャーファルさんが好きならそう言えばいいのに」
涙で目が滲む。自分が何を言ってるのかすらわからないが、ずっと心の底にあったモヤモヤがだんだん晴れていくように思えた。
「……言うの?」
「言えば、応えてくれるんじゃないんスか?」
応えてくれる。本当に?わからないけど、でも……
「……っ、好きだよバカ!ジャーファルのバカ!嫌いにならないでよぉ…」
泣きながらそう言ったところで、意識は途絶えた。
◇◆◇
「――聞こえてました?ジャーファルさん」
「…あんなデカイ声、聞こえないわけないでしょう」
物陰からでてきたジャーファルは、だれが見ても真っ赤だった。
「お代は明日にでも払うので」
そう言うと、ジャーファルはカーラを背に担ぎ始める。
「ん…お兄ちゃん…?」
「…そんなベロベロになるまで呑んで…もう少し考えて呑みなさい」
「わー!お兄ちゃんだー!」
キャッキャとはしゃぐ妹とだるそうに妹を背に背負う兄を見て、シャルルカンは思った。
「あんたら兄妹……めんどくさ」
「うるせえ」
「毎回同じことするんだったら、いっそのこと囲っちゃえば?」
「うるせえっつうの!」
両手は塞がってるからと油断してたら、右足が飛んできた。
「い…った!」
「じゃ、あとよろしく」
さっさと出て行く兄妹を見送る。
毎回酔うごとに告白まがいの言葉を叫んでるのだから、周りにカーラの気持ちはまるわかりだ。対しでジャーファルはジャーファルで、毎回律儀に顔を赤くしているのだから手に負えない。
「あー、めんどくせえ」
呑み直しとばかりに、シャルルカンはグラスを傾けた。