「大丈夫ですよ」


その声は、まるで水面を輝かせる光のよう。
キラキラと反射しながら、真っ暗だった世界をぱぁっと輝かせてしまう。


「大丈夫。ソフィアさん、あなたはなにも悪くない」


言い聞かせるようにゆっくりと紡がれるその言葉は、静かに静かに、私の体に浸透していく。じんわりと、体が温かい。
気づけば、私はジャーファルの腕の中にいて、静かに頭を撫でられていた。


「じゃー、ふぁる…」

「怖かったですね。苦しかったですね。でももう大丈夫。私が、私達が守るから」

「…ダメ。主には、逆らえない」


そうだ。逆らってはいけなかったんだ。彼らからは逃げられない。どこまでも追いかけてきて、殴られる。


「そんなことはない。少なくとも、俺達は君を守れるさ」

「そ、そうよ!だからソフィアさん、そんな悲しいこと言わないで…」


すごく、すごく頼もしい笑顔の王と、悲しそうに目を伏せたヤムライハ。ずっと頭を撫でてくれているジャーファルも含めて、三人共、とても優しい人だ。


「ソフィアはどうしたい?」


王に聞かれて、枯れ果てたと思っていた涙があふれた。思わず口をついた想いは、紛れもない本心。


「自由に…なりたい…!」


檻の中からずっと見ていた。青空に浮かぶ白い雲。それを横切り羽ばたく鳥達。

大空を思い切り羽ばたいてみたくて、なんのしがらみもなく生きてみたくて、私は、あの檻から飛び出してきたのだ。


「よく言えましたね」


優しく、慰めるように言われた言葉を、たっぷり時間をかけて噛み締める。ポロポロと涙を流しながら、ジャーファルに縋り付いた。



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