そして私は旅に出る!
一人で倒しに行く勇気などあるはずもない私は、一先ずギルドにて仲間を探していた。
「じゃあ、おねえさんはおじさんを倒しに行くわけなんだね?」
青い髪の少年に問いかけられ、私は力一杯頷く。
おじさんってだれだ?と一瞬疑問に思ったが、まあいいやと頭の外に押しやった。
「そうさっ、少年!」
「フィレアおねえさん、僕は少年じゃないよ。アラジンさ」
「そうかアラジンくん。では早速仲間を紹介してもらえるかな!?」
きっと私の目はキラキラしていることだろう。
「わかったよ。じゃあ、サポーターを紹介するね!」
アラジンくんもキラキラとした目で答えてくれたが、いやいや待て待て。
「アラジンくん?サポーターはいらないよ?」
「え?でも、ここで紹介できるのはサポーターだけだよ?あとの仲間は旅で集めるのさ」
キョトンとしているアラジンくん。……可愛い。
私はチッチッチと人差し指を右に左に。
「ギルドには勇者もいるだろう?私は勇者を紹介してほしい!」
「確かに勇者もいるけど……おねえさんが冒険するんでしょ?」
勇者は二人も必要ないよ?
首を傾げるアラジンくんにならい、私も首を傾げる。
「私は勇者じゃないよ?」
「えっ!?どうゆうことだい、フィレアおねえさん!」
「私はサポーター志望です」
「ええっ!!?」
そんなこと聞いたことない…とか言ってるアラジンくん。
当たり前じゃないか。勇者なんて危ない職種に進んでなろうとは思わん!
「だから、勇者を紹介してくれない?」
そう聞けば、微妙な顔をされた。
「サポーターは荷物持ちだから、勇者と比べて分け前はとても少ないよ?いいのかい?」
「命より大事な物はない」
出来るだけ安全にお金を集めるべし!
これが、我が家の家訓だ。
「わかったよ、おねえさん。じゃあ……」
「お、アラジンじゃねーか!」
「アリババくん!」
アラジンくんの話を遮り、アリババくんとかいうこれまた可愛いイケメンくんが手をふってこちらにやってきた。
「グッドタイミングだよ、アリババくん!」
「は?なんの話だ?」
「このおねえさんが勇者を探しているんだって。アリババくん、一緒に旅をしてあげなよ!」
おお、それはナイスアイデア!
イケメンくんと旅が出来るなんて、幸先いいなぁ。
「悪いアラジン。俺、もうカシムとパーティー組んじゃってるからさあ」
「ええっ、本当かい!?」
ええっ、マジですかい!?
「ああ、悪いな。おねーさんも」
「そうかい…それはしょうがないね。旅の幸運を祈っているよ!」
「サンキュー。金入ったら、また遊びに行こうぜ、アラジン!」
爽やかに笑って出ていったアリババクン。
なんだとー。カシム、ゆるすまじ。
「ごめんよ、フィレアおねえさん」
「可愛いからOK!」
チクショー可愛いな!小首傾げて謝られたら許すしかないだろ!!
「それで、新しい勇者なんだけど…」
「強い人がいいな!」
ついでに言えばイケメンでー、かっこよくてー、優しくてー
「おねえさんにぴったりの人がいるよ!」
「じゃあその人で!」
「もう決めるのかい?もう少し聞かなくても平気?」
「いいよいいよ。聞いたってわかんないから」
「そうかい?なら、呼ぶね!」
ジャーファルおにいさん!
アラジンくんに声高々に呼ばれたそのジャーファルオニイサンとやらは、奥の扉から堂々と…
「はいはい。何か用ですか、アラジン?」
「ブフッ!?」
訂正。となりのカウンターからひょいっと出てきました。
…って、おい!
「なんでそこから!?」
「暇なんで、少し仕事をしてたんです」
暇!?勇者って暇なの!?
ていうかなぜ勇者が仕事ぉぉぉ!?
「なぜジャーファルおにいさんが仕事をするんだい?」
「私、仕事をしないと蕁麻疹でるんで」
はあぁぁぁ!?
仕事しないと蕁麻疹!?勇者が!?勇者がかぁぁぁぁ!?
「アラジン、ああいう人には近づいてはいけませんよ」
「ちょっと待てぃ!」
私の可愛い可愛いアラジンくんになんてこと教えこんでんだ!
「事実ですから」
一刀両断。ですよね〜…。
「そんなことより、アラジン。君は私に用があるんですよね?」
「そうだった。忘れるとこだったよ!おにいさんには、このおねえさんとパーティーを組んでほしいんだ」
「嫌です」
「速答ぅぅぅ!?」
「お断りします」
「真顔で拒否んなぁぁぁ!!」
つ、疲れる……
「第一、私は勇者ですよ?なんでこんな小娘に顎で使われなきゃならないのです」
「小娘言うな!」
「フィレアおねえさんはサポーターがしたいんだって」
「サポーター?」
瞬殺の瞳で見られ、頬が引きつる。
「わ、私はサポーター志望です」
「ふうん?」
さらには全身舐めるように見られ、早くも命の危機に。
い、嫌だ。ちがう人がいい。この人怖い!
「わかりました」
「断れよぉぉぉ!!!」
「そろそろ仕事も無くなってきたので」
「やっぱり仕事かよ!」
どれだけ仕事人間なんだよ!
ギャーギャー(私だけが)騒いでるうちに、アラジンくんに笑顔で追い出されてしまった。
「……」
「……」
な、なにか…なにか話さないと……
「あの〜ジャーファルさん?」
「ジャーファルでいいです」
「じ、じゃあ私もフィレアで」
「もとよりそのつもりです」
「……」
「……」
終わったよ、会話。終っちゃったよぉぉぉ!
ていうか、もとよりそのつもりですってなんだよ!私には敬称つける理由もないってか!?
「ところで」
「はいぃ!!?」
急に話しかけられてびびった。
声も裏返ったし。
バカァ、私のバカァァ!!
「…プッ」
笑われた。なんでかしらんがジャーファルに笑われた。
その笑った顔が可愛くて、涙を拭うその仕草が思わず色っぽいと感じてしまった。
って……
「いつまで笑ってるつもりだぁぁぁ!!」
「す、すみません、つい……」
ひいひい言ってやがる。泣くほどおもしろいか、このそばかすめ。
しばらくして、ようやく笑いを引っ込めたジャーファルが、先程の質問を口にした。
「何をしに行くんですか?」
「何って?」
「だから、何を倒しに行くのか。これからどうするのか。それを聞いてるんです」
「なるほど」
うーんと考えて、浮かんだ考えを口に出す。
「これからは成り行きにまかせます」
「何も考えてないでしょう」
「目指すは一千Jの賞金首!」
「一千J?」
「そうです。魔王の…」
えっと、名前なんて言ったっけ?
だがしかし、我が勇者、ジャーファルは皆まで言わずに真意を汲み取ったらしい。
「ああ、あれか……まあ、頑張ってください」
「頑張るのアンタ!!」
ていうか、え?
まさかの知り合いですか、ジャーファルさん?
やる気のない勇者
(私はサポーターだし!)