ツンデレな彼女
持ち帰りの仕事を自室でやっていると、彼女であるエミリがじーっとこちらを見つめてくる。
「……」
かまってほしいのだろうか。
だが、面白いので放っておこう。
「……」
「……」
「……」
「……」
とうとう横からの視線に耐えかねて、エミリの方を振り向いた。
「あの、どうしたんですか、エミリ」
「!」
目が合うとバッと顔をそらして、ふんっと鼻を鳴らした。
「べつに、どうもしてないもん」
「こっちを見てたのに?」
「ジャーファルの向こうにある花を見てたの!」
…可愛い。こうなるといじめたくなるのが、男というものだろう。
私は一際大きな声で、こう言った。
「なんだ。エミリがかまってほしいなら、仕事を切り上げようと思ったけど、花を見ていたのなら別にいいか」
「え…」
そういって再び書類に向かう。ちらりと横目でエミリを見やれば、案の定オロオロしている。
気づかない振りをして筆ペンを動かしていると、そっと後ろから首に手が回された。
「…かまってくれるんでしょう?」
拗ねている声音に、くすりと笑みが零れる。
「やっとその気になりましたか?」
「……」
「おや、返事がありませんね」
「わ!?」
エミリを抱き上げ、膝にのせる。
顔を真っ赤にしているエミリに、にっこりと微笑んだ。
「返事がきちんとできない子には、お仕置きですよ」
「お仕置きって…」
だんだん表情が強張っていくエミリを無視して、あれでもないこれでもないと考える。
最近の楽しみが、エミリをいじめることになっているのが少し悲しいが、まあそこは置いておこう。
ついでにやりかけの仕事も置いておこう。
「そういえば、あなたから口づけしてきたことって、ありませんよね」
「はっ…!?」
「口づけてくれませんか、エミリ」
「っ…!」
真っ赤になっているエミリは、本当に可愛らしい。
「どうしたんですか、早くしてください」
せかすように言うと、涙目で睨んできた。そんな目で睨んでも効果はないのに。
素直に負けを認めれば、許してあげてもいいかな。
そんなことを考えていたら、頬をがしりと捕まれた。
勢いよく引き寄せられて、唇に柔らかい感触。が、すぐに離れていってしまった。
呆然としていると、真っ赤な顔のエミリがにっこりと微笑んでいた。
「どうよ、ジャーファル。参った!?」
その言葉には答えず、エミリを抱き上げ寝台へ。
驚いてされるがままのエミリ見て、心底思った。
ほんとうに、私の彼女はいじりがいがある、と。
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