もう一度だけ[1/7]
「銀ちゃん」
何だか思いつめたようなオレを呼ぶ声に。
「ん?」
ジャンプから顔を上げて目の前に座る花奈を見た。
すると、一瞬口開き掛けて目を泳がせて。
「あ…と、いちご牛乳無くなってたから買い物、行ってくるね?他に何か欲しいものある?」
「あるある」
「なぁに?」
「花奈の愛」
尖らしたオレの唇を。
「…帰ったら、ね」
指先でそっと撫でて泣きそうな顔をする。
変だ、って気付いてたのに。
「いってきます」
そう告げた花奈の声すら、どこか暗かったってのに。
何で止めなかったんだ?!
居なくなる、なんて。
思いもしなかった。
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