クリスマスSP(真選組より愛を込めて)土方[1/1]
「遅いよ…」
待ち合わせの時間はとっくに過ぎたけれど。
現れない、…そんなのわかってた。
「女の子待たせるなんて最低ですよーだ」
…勝手に待ってるって言ったのは私だけれど。
ガラッと土方の部屋を開けて現れたのは、一番隊隊士の花奈。
『副長っ!!』
『あ?』
『今日は何の日でしょうか』
『…警視庁密着24時が入る日だな』
『そうじゃないでしょう〜!!!!ク・リ・ス・マ・ス。クリスマス』
滝川●リステルのような手つきで、ねっとりとしたクリスマス。
『おもてなし、みてェな言い方してんじゃねえよ。クリスマスねぇ、もうんな時期か』
『クリスマスデートしましょ』
花奈の言葉に首を傾げた。
『誰と誰がだ?!』
『私と、副長に決まってますよ〜!』
顔赤らめて、テヘッとか笑ってるけどォォォ?!
『決まってねえよ、勝手に決めたのお前!!大体何が楽しくてお前とデートなんざ』
『楽しいですよ〜?私、副長とデートできたら幸せですし』
『…密着24時とテメエを天秤にかけたとして』
『はい』
『テメエのどこに密着24時以上の魅力なんざあるってんだ?』
『…おおお、さすがにちょっと傷つくかも』
『今更かよっ?!』
大体、今までだって花奈の誘いには丁重に、且つ辛らつに断ってきたはずだ。
もうそろそろ気付いてもいいんじゃねえのか?
オレァ一隊士を特別扱いなんざしねえ。
『でも、いいんです!!』
『あ?』
『来てくれるの信じて待ってます』
差し出したクリスマスカードには、鍵と地図。
そして。
【私を探して?】という謎の文字。
…意味がわからねえしッ。
『絶対、行かねえ』
『絶対待ってますもーーーーん!!!』
笑いながら土方の部屋を後にする花奈の背中を見ながら土方はただ頭を抱えていた。
カードでの待ち合わせ時間は午後七時。
見上げた先にある広場の時計はすでに午後十一時。
密着24時だって、既に終わったはずで、そこから探してくれたって1時間もあれば到着するはずで。
…やっぱ来ないのかな。
わかっちゃいたけど。
一回でいいから副長とね、デートしてみたかったの。
ポケットから携帯を出すと。
…不在着信?!
そういえば音消してたぁぁぁ!!
じ、事件でもあった?!
履歴を見ると。
副長、副長、副長。
もう3時間も前から鳴らしてくれていたようだ。
「副長?!」
慌てて電話を掛け直す。
「バカだろ、お前っ!!!!」
いきなりそんな怒鳴り声が通話口から聞こえて。
思わず首を竦めた。
「あ…の?」
「…テメエが渡した地図通り駅のロッカーに来てんだよ」
「はい?」
だったら、何故ここに辿り着かないの?
「…ロッカーと鍵が合わねえ」
「え?!」
「合わねえんだよ?!無理やり開けようとしたら、職質されたんだからな、クソッ!!!」
「で、でも、それ駅のロッカーですよ?北口のっ!!」
「…北口だァ?」
「ええ」
「北か南かぐれェ書いとけッ!!バカッ!!!」
最大の怒鳴り声の後で切れた通話。
…た、確かに、地図に駅しか書いてなかったのは私で。
けど、わかると思ったんだもん。
まさか副長が北口にもロッカーあること知らないなんて思ってなくて。
副長、きっとずっと開かないロッカーと格闘して職質されて…、グフッ。
…どんな顔して職質されたんだろ?
あんなクールな顔して真っ赤になって焦ったんだろか、クスクス。
ダメだ、面白くなってきた、副長が職質、鬼の副長が!!!
顔を覆い声を出さぬようにしゃがみ込んで、泣きながら笑った。
思い出して込み上げる笑いに肩が震える。
最早怒られたショックんどとうに引っ込み、あまりの面白さに一頻り笑い転げてそろそろ帰ろうか、と顔をあげようとした。
その、時。
「オイ」
頭上で声をかけてくる聞き覚えのある声。
顔を覆った指の隙間から、そっと見上げた先にいたのは。
「…悪ィな、こんなにたくさん」
ロッカーに私が入れていた大量マヨの袋とこの場所が書かれた地図を持った副長が気まずそうに立っていて。
「…怒鳴って悪かった」
息が切れている。
きっと走って来てくれたんだ。
ガサッと袋を地面に置いたと思ったら、その掌が頭に乗る感触。
「…遅くなって、悪ィ」
優しいその声に心が温かくなる。
「…副長、ごめんなさい。地図わかりづらくて」
「オレも、北口に気付かなかったんだし…。だから、すまなかった。泣かせるつもりはなかったんだが」
…泣かせる?
あ、もしかして、この姿勢…ですかね?
「もう時間もねェし、お前にお返し買えるような場所も閉まっちまってるし…、何もしてやれねえけど、たまにゃァ2人で飲みにでも行くか?」
「…副長ぉぉぉぉっ!!!」
その声色の優しさに思わずジャンプして抱きつくと。
「…冷てェ…が、まァオレのせいか。仕方ねぇ」
温めてくれるように抱きしめ返されて。
天にも昇る気持ちっ!!
何で、こんなに優しいの?!
考えて一つの結論に自分の中で落ち着く。
…よし、デートだ、デート!!
ニヤニヤが止まらなくなるから。
顔を見られないように俯いて、副長の腕に手を絡める。
いつもならば絶対振り払われるだろうそれにも抵抗を見せないのは。
…泣かせた、という罪悪感から…だろう。
大いに利用させてもらおう!!
「…副長、メリークリスマスです!」
息を止めて涙目にし目をウルウルさせて見上げた先で。
「…おうっ」
と照れたような顔の副長がボソッと呟いた。
メリークリスマス。
後一息です!!!
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