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クリスマスSP(真選組より愛を込めて)山崎[1/1]

「山崎さんっ!!」

玄関先までオレを探してきたらしい花奈ちゃんの声に振り向くと。

小さな包みを差し出される。

大きめのハンカチで包まれたそれを受け取るとまだ温い。

「今日は鮭とおかかです、大きめに作ってありますんで」

真っ赤になる花奈ちゃんを見ていると、頬が緩む。

「ありがとう!毎度花奈ちゃんの作るおにぎり、美味しいよ!!」

いい子いい子と頭を撫でると真っ赤になって頬が緩む。

「今日もお気をつけてお仕事頑張って下さいね?」

「うん、…見送り、いつもありがと」

「いいえっ…」

「じゃ、いってきます!!」

花奈ちゃんに向かって敬礼をすると花奈ちゃんもオレに習って敬礼してくれて。

そのはにかんだ笑顔の可愛らしさに浮かれながら仕事へと向かう。

張り込みのときはあんパン?!

そんなの昔の話だ。

今のオレには、花奈ちゃんが毎度作ってくれるこのおにぎりがある。

おにぎりだけじゃない、その横に添えられている卵焼きやお新香もある!!

…花奈ちゃん手作りってとこが、みそだ!うん。

いくらモテないオレだって。

花奈ちゃんがオレに気があるってことは、薄々気付いてる。

オレにだけ特別に作ってくれるこのおにぎりや。

夜遅く帰っても、その音を聞いてか眠そうな目を擦りながらも淹れてくれる温かいお茶。

真っ赤な顔で。

「山崎さんっ」って走り寄ってくる、可愛い子。

…オレだって、そんな君のこと。

ずっと思ってる、って知ってた?

だからね、今度のクリスマスはオレに格好つけさせて?

…君に思いを伝えたいんだ…。





「…付き合ってくれねえか?」

エェェェェェェエ?!

夜更けに帰って来て見てしまったのは花奈ちゃんが二番隊隊士に告白されている場面で。

監察方のオレよりよっぽど恰幅もよく、しかも次期隊長とも噂されているその人はオレよりも先輩でしかも顔もいいし、男らしいときていて。

…オレに勝てるような要素はまるで無い。

思わずハンマーで殴られたようなショック。

こちらに背中を向けて俯いている花奈ちゃんが何て答えるのか気になって仕方ない。

できるならば。

『好きな人がいるから』とそこはビシッと断ってもらって。

で、オレからの告白を待ってて貰いたいとか思ってしまう。

だから。

「…考えさせて下さい」

そう答えた花奈ちゃんに驚いて、一歩もそこを動けなくなった。

今、どんな顔で…?

その告白を受け入れる、とそう言うの?

「…わかった。悪かったな。こんな夜遅くに呼び出して」

「いいえ」

先にそこを後にした先輩隊士の背中を見送って、花奈ちゃんもそのままそちらに向かって行くだろうと思っていたのに。

こちらに歩いてくる。

ヤバイ…!!!

そうか、花奈ちゃんの部屋はこっちだったァァァ!!!

「…山崎さんっ?」

咄嗟に暗がりに身を潜めたけれど隠れる場所もないオレを見つけてしまったようで花奈ちゃんが驚きの声を出す。

「っ、と…。ゴメン、その立ち聞きするつもりはなかったんだけど…、その」

「…見てらっしゃったんですか?」

「…うん」

気まずい空気が流れる。

マズイ、軽蔑されたのか?!

監察方ってやっぱり陰険だとか、そう思われたのかな?!

「…どうしましょう、ね」

眉尻を下げて誤魔化すように笑う花奈ちゃん。

「…あの人、いい人だよ。男らしいし、しっかりしてるし、きっとこれから出世してく人だしね?」

「…そう、ですね」

「うん、きっと花奈ちゃんのことも幸せにしてくれんじゃないかな?…お似合いだよ?」

言いたくもないことばかりベラベラと喋ってから。

傍と気付くのは花奈ちゃんの口数の少なさで。

「…ですね、はい。…山崎さんが仰るならきっといい人ですよね」

花奈ちゃんが微笑んだことに一気に絶望感が襲う。

「…ずっと片想いしてた人がいたんです、けど。告白する勇気もなくて…。そんな時に真剣にあの人から告白されて…、何だかその一生懸命な顔が心を打って…。すぐに、断れませんでした。でも、断らなくて良かったです、思うより思われた方が女性は幸せなんだって聞きますしね。明日お返事します」

ありがとうございました、と深々とお辞儀した花奈ちゃんに胸が痛む。

おやすみなさいと通り過ぎた彼女の背中を。

気付けば抱きしめていたんだ。

「…オレじゃ、ダメかな?」

「…山崎、さん…?」

彼女の声が震えていた。

でも、きっとそれ以上にオレの声が震えてるはず。

心臓だってドクドクと脈打っちゃって。

何て言ったらいいのか全然わからないけれど。

だけど今、言わなくちゃ。

明日じゃ遅いんだ!!

「…オレだってずっとずっと。…君の事が好きでした。君と顔を合わす度に嬉しくて…、仕事も頑張れてたんだ」

小さな声で、嘘…?とかぶりを振って泣き崩れる彼女を前から抱きしめなおして。

「…好きです」

今のオレの精一杯の気持ち。

真っ赤になった彼女の目が涙を称えながら微笑んで。

「ずっと、ずっと…私もっ」

腕の中でしがみ付くように泣くその細い身体を。

ギュッと抱きしめる。



だから、クリスマスはオレといて?

頷いた彼女の額にそっと口づけた。


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