×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
君の側で[1/11]

「辰馬?」

見上げた横顔がひどく寂しそうに見えてしまって、こちらまで不安になったのは一瞬。

あなたは私を見下ろして、大きな口でニカッと笑ってくれるから。

その笑顔が心の奥まで滲み込んで来て、温かい気持ちになれるって知っていた?




きっとずっと同じ道を歩めると思っていた。

銀時と晋助、ヅラと辰馬、そして私。

高校を卒業して、そのままエスカレーター式に大学に入学して皆で卒業するって…。

なのに。



「辰馬のヤツ、留学すんだってよ」



銀時から呼び出された大学近くの皆でよく集ってたファミレスで。

そう告げられた瞬間に周囲の騒音なんて吹き飛んでいった。

今銀時が言った言葉の意味を噛み砕いて見て。

けれど、何も変わりはしない。

銀時の口から「なぁんてな」っていう言葉も出ないところを見ると本当なんだろう。

「…知ってるのは銀時だけ?」

「…いや、高杉もヅラも知ってる。昨日、辰馬ん家で麻雀しててよ。まだもうちょい先の話だけど他には内緒なって」

「…他、って私のこと…?」

「ん…、けど、それじゃァあんまりだろ、だってお前だってオレたちとずっと一緒で。それに辰馬のこと」

言いかけた銀時に首を振ってその先を止めた。

「もうちょい先って、いつ?」

「来月だって」

「もうちょいじゃなくって、すぐじゃん。バカでしょ、ちょい先とすぐの区別もつかない、日本語もまともにわかんないようなバカが留学とか笑っちゃう」

笑えてきて、銀時が霞んでいく。

「…オレが泣かしたって思われんだろッ」

向いの席にいたはずの銀時が私の横に座ってきて奥に詰めろと言う。

「泣くな、って」

そう言いながら私の頭を抱き寄せて、泣き止むまでずっとそのままでいてくれた。

「…言わねえの?あのバカに。お前の気持ち」

「…言わない、絶対、絶対、言ってなんかやらない。もう二度と口も利かない、見送りなんかしてやんないっ」

「意地張るとロクなことになんねえぞ?」

「いいよ、…それに私の気持ち知ってるのは銀時だけだし」

「ヅラも高杉も気付いてるってえの」

「エエエエエッ?!」

「お前見てたらわかるって。気付かねえのはあの天パだけ」

「銀時だって天パのくせに」

「アァ?天パ馬鹿にすんじゃねえぞ?」

「いや、今自分で馬鹿にしてたしね?」

いつの間にか涙も止まって、少しだけ笑っている自分に気付く。

「不思議だよね、辰馬って。幼稚舎の頃からずっと一緒だった私たちとは違って、辰馬は高校から入学してきたじゃん。なのに、入学初日から何故か馴染んできてて気付くともう何年も一緒にいたような顔してさ」

最初は図々しいし声デカくてウルサイし、晋助の繊細な部分知らずにほじってキレられてるのに笑ってたり。

ずっと銀時のこと金時だって勘違いしてるらしくて未だに金時呼んでるし。

ウザイのに。

とんでもなく馴れ馴れしかったのに。

何も考えて無さそうで、けれどどこか私たちとは違う場所を見据えているようなその目に、笑顔に、…私を呼ぶ声に。

惹かれていた…、この恋はもう6年にもなる。

「いい機会だから、私も辰馬じゃなくって他の男にも目を向けてみるよ、合コンとか出てみたりして。あ、銀時セッティングしてよ?私の友達割と可愛い子がいっぱいだからね、安心していいよ」

「…だったらオレにしとくか?」

「は?」

「なんてな、誰が好き好んで今更幼馴染になんか手ェ出すかってえの。あ、美紗ちゃんとか唯ちゃんとかメンバー入れとけよ?」

「了解っ!晋助とヅラも案外人気あるからねぇ、連れて来ていいよっ」

「オレは?!」

「…ゴメ、いい加減そうって評判しか聞かないや」

へへっと笑うと銀時は舌打ちして、もう溶け切ってしまったパフェをズズズっと飲み干していた。


目次へ
[1/11]