君に届け!3[1/6]
「…あの、…コレ落ちたよ」
朝食の後、そう声をかけられて振り向くと。
真っ赤に目ェ腫れ上がらせた花奈がオレと目を合わせないうように何かを持って立っていた。
「…悪ィ」
伸ばした掌に乗せられた金属物。
…カッコ悪ィ、いつ落としたんだよ、拾われた相手が花奈ってのがまた情けなくて。
「オレのだって、何でわかんの?」
「っ、だって」
だって?そうだよな?
ずっとお前がつけてたもんだし。
んなもん持って修学旅行乗り込んできてんのバレちゃって。
夕べは夕べでとんでもねえことしでかしちゃったし。
…あぁ、小せえ男だな、オレって本当に。
「…コレ、オレんじゃねえから」
つき返した。
つき返された花奈はどうにも困った顔で、その掌に乗る金属とオレを交互に見ていて。
「…持ち主いねえんならさ、捨てちゃえば?」
「え?」
「捨てちゃえよ」
そう花奈に捨て吐いて背中を向けた。
その後それがどうなろうと、もうオレの知ったこっちゃねえ…。
ゴミ箱行き?いいんじゃねえの?
その方がオレだってサッパリするってえの、最悪な誕生日のハジマリだ。
修学旅行のど真ん中に誕生日だなんて嫌がらせだよな、コレ。
…去年の誕生日はさー、二人で学校帰りに映画見て夕飯食って初チューしてさー…あ、イケね、まぁた振り返っちまってる。
「ハッピーバースディ!!銀時!!」
部屋に戻った瞬間に、派手なクラッカー音に出迎えられた。
「…何やってんの…?」
三角帽子被ったヅラ、鼻眼鏡の辰馬、ヤラサレタ感満載の猫耳高杉…誰か助けてやれ、高杉だけは。
他二人?通常運転!!
「ビックリしただろう?オレがこっそり考えたサプライズだ」
自慢げなヅラのちっぽけな脳味噌にビックリだな、うん。
「…ありがとーございまーす」
今年最初のおめでとうはヤローからとか不憫ですよね、コレ。
本当は夕べもしかしてなんて待ってた。
24時になったら去年みてえに「おめでと♪一番にお祝いできたかな?」ってハートマークいっぱいのメール。
泣かせて嫌われてそんな後に来るわけねえとは思ってたけどな。
…だから、もう諦めるか、って…。
割と打たれ弱い子だと思うんだよ、うん、痛えな、オレ。
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