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POKER FACE[1/3]

夜中に玄関のドアが静かに開く音。

幻じゃないかな、なんて自分の耳を疑ったけれど。

間違いない。

それから冷蔵庫を開けて、きっとコップに一杯水を注いで飲んでるんだ。

寝室のドアを静かに開ける音がして。

「晋助?」

覚醒した頭で廊下からの明りを頼りにその人影を見上げれば。

「悪ィ、起こしたか?」

ベッドの端に腰掛けて私を見下ろすのは、やはり晋助で。

「残業?」

「ああ、終電逃しちまって」

そう言いながらネクタイを緩めてるけれど。

「…嘘、でしょ、残業なんて」

起き上がりクンクンと晋助の顔に近づいて匂いを嗅ぐと。

「っ、だよ」

慌てたように私から目を反らす。

「お酒と女の臭いがするけど?」

甘ったるい嫌な匂いがした。

口を尖らせた私の頬に伸びてきた晋助の白く長い指先が一度だけそっと頬を撫でてから。

「勘違いするな、接待だ」

クックックと低く含み笑いをして私の頬を抓る。

「どうだかっ、てか痛いんだけど」

離して、とむくれる私の頬を今度は両手で挟みこんで。

一度ペロリと私の唇を舐め上げてから躊躇無く。

突然割り行って来る器用な舌先。

絡め取られて抵抗しようとしても、深くなるそれに抗えることなく。

「っ、ふっ…んっ」

蕩けてしまいそうな私の腰を抱き寄せて。

「他の女の味なんざしねえだろ?」

なんて耳元で囁かれく色帯びた声。

「っ、何か誤魔化されたみたい!!」

晋助がいつも一枚上手みたいでいつの間にか言い包められてるような気がして悔しいけれど。

「さァて風呂入ってくる、お前も入るか?」

そう言いながらYシャツのボタンが外れていき胸元がはだけてく。

「さっき入った!」

何度見たって恥ずかしくて目を反らしてしまう私の反応をきっと弄んでるんだろうと思うと悔しいけれど。

「じゃァ待ってろよ」

含み笑いをしながらお風呂場へと向かっていく彼に、知らない、と布団を被る。

だってきっと顔真っ赤になってるんだもん。

だって半月ぶりだよ、うちに来るの。

マメに連絡なんてしてくる人じゃないし、こうして終電逃した時にたまにポツッと現れる。

もしかしたら私はそういう時のためのていのいい女かもしれない、なんて何度か悲観したこともあったけれど。



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