テンパな人とテンパる人[1/4]
「花奈が浮気してるだァァァ?!」
「あ、証拠もありますぜ?」
総悟の持つ携帯には幾つモノ2ショット写真。
それぞれ日にちが違うようで花奈の服装や髪型が違う。
非番の日や早番の日など、こうして会っているという。
「土方さん、あんたもうすぐ振られるんじゃねェですかィ」
ニヤッとやけに嬉しそうに笑う総悟にイラつきながらも。
その写真を食い入るように眺めた。
…よりにもよって、万事屋なんかと?!
「…たまたま偶然会ったとか、そんなんじゃねえの?てか、お前何で毎度毎度こんな写真撮れてんの?!」
「へィ、花奈の後を尾けてたら撮れたんでィ!」
「威張るこったァねェだろ!!サボりじゃねえかッ!!」
「いや、違いやす、尾行ですぜ、尾行」
「ねェから、花奈の尾行なんて任務どこにもねェからね?!」
「で、尾行してたからわかるんでさァ、二人が待ち合わせしてたってことも」
あまりのショックにポロッと咥えていた煙草が膝の上に落ちズボンを焦がす。
「ッアチ!!」
「動揺しすぎでさァ、土方さん。いつかこうなるだろうなんて目に見えてたでしょうに」
「アァ?!」
「仕事仕事仕事、書類の山に埋もれて相手もしてくれねえ彼氏なんざ、いねえも同じ」
「いや、この書類の山作ってんのお前だからね?!好きで埋もれてるわけじゃねぇからァ!!」
「花奈だって、んな紙ばっか相手してる男より金も仕事も無えけれど、いつでも話し相手になってくれる男の方に流されても仕方ねェだろィ」
「だから紙ばっか持ってくんのお前っ!!!」
「ちなみに、今日も約束してますぜ?」
「…」
「かぶき町二丁目公園、午後15時」
チラリと総悟に気づかれぬように時計を見ると、14時30分。
30分しかねェじゃねぇかァ!!!!
「…腹がイテエ」
「は?」
「厠行ってくらァ」
「公園の横にも確かトイレはありやしたんで」
「うるせー!!」
すっかりオレの胸の内なんぞ総悟にはお見通しだろう。
襖を閉めた瞬間に走った、そらそうだろう。
あんな写真、総悟が山崎あたりにでも作らせた合成写真かもしれねえし?
ちゃんと自分の目で見れば、安心するし?
大体、あれだ。
花奈が浮気なんかするわけねえんだよ、うん。
しかもあんな天パなんか相手にするわけねえ。
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