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戦火に咲く花[1/6]

「銀時、コノヤロォォォォ!!!」

泣きながら銀時を追い掛け回す女が1人。

まだ朝もや煙る中、寺の片隅で柱を挟んで逃げ惑う銀時は焦っていた。

「ちょ、悪かったってェ。まさか、そうなるとは思わなかったってェの!!アレだよ、ホラ。川で洗い流せば取れるんじゃね?」

「取れるか!ドアホが!!髪に餡子なんぞつけちまったら絡まるに決まってるだろが!!何で暗闇で饅頭なんか食った?!何で私の頭に零したことに気付かない?エェェェ?!」

「いや、だって暗かったし、零したかなァ?ちびっと餡子少なくねェ?とは思ったんだけどな、まさかお前の頭にべっちゃり乗っかってたなんて、そりゃァ暗闇じゃァ確認できね、ってヲイ!!!刀は止めろ!!振り回すなっ!!!」

激高した女は刀をチャキリと身構えて銀時をジッと見据える。

「そこまでにしとけ、花奈。まだ皆疲れて寝てんだろォがッ」

背後から不機嫌そうな声。

「だって、見てよ、この髪!!!銀時のバカが私の髪に餡子落としやがって」

振り向いた女の頭の上は茶色に固まっていて、それが見事に髪に絡まっていた。

ただでさえ、女の髪の毛は銀時同様にうねっている云わば天然パーマというもので。

短く揃えた髪の毛に餡子がギッチリと整髪料のごとく髪の毛を固めている。

一瞬目がテンになり噴出してしまいそうになったが、それを堪えなければその矛先はこちらにも向かうだろう。

「…洗ったら取れんだろ、オラ、手伝ってやっから川行くぞ、花奈」

「晋助、今笑いやがっただろう?」

血走った目がギロリと高杉を捕らえる。

「笑ってねェ」

「いや、笑った!!!絶対笑った!!見たよな?銀時」

「お、おう、笑った、うん。笑ってたな」

矛先が変わったことに安心し、それに加勢する。

「笑ってねェ!!!テメェ、何調子こいてんだ、銀時ィ、元はといえばテメェが花奈の頭こんなんしたんだろうがッ!!!」

「あ、やっぱ笑ってんじゃねェか、ウ○コついてるみてェとか思ってんだろ、オメエも」

「…ほぉ?2人とも人の頭にウ○コ乗っかってるって、そう思ってんだな?」

冷え冷えとした女の声が寺に響き渡る。

「ぶった斬ってくれるわ!!!!!神妙にしろ、2人とも!!!」

最早斬りかかる勢いの花奈を羽交い絞めにしたのは昨夜から遠征に出ており、今しがた帰ったばかりの男。

「お止めください、姉上。こんなくだらない者どもを斬ってしまっては刀が腐ります」

「小太郎?」

止めた相手が自分の弟だとわかり振り向けば、小太郎もまた花奈の頭を見て目を丸くした。

「…姉上、頭が大変なことに」

「そうだよ!!コイツのせいだよ!!銀時のせいだ!!そうだ、小太郎あんたのせいでもあるね?あんたが夕べ私を置いて遠征になんぞ行きやがるから悪い!!だから銀時なんかの側で寝なくちゃならなくなった、あぁ、あんたのせいだ!!!」

最早とばっちりではあるが。

自分が側にいない時は銀時の側で眠るように言いつけたのは小太郎だった。

高杉や坂本の側だと万が一間違いでも起きそうで心配であった。

その点、銀時であれば花奈を女として見ているようには思えず、また自分同様遊郭などにも興味は無さそうだったので側にいるように、と確かに言い聞かせていたのだけれど。

まさか、銀時の側で眠れば餡子が降って来てこんなことになるなんて思いも寄らなかったのだ。

「姉上、落ち着いてくだされ。こやつらにはおれが言ってきかせます故、まずはその頭の…を何とかしましょう」

「小太郎?…って何?今何て言ったの?まさか、あんたまで」

「何騒いじょるがー、朝っぱらから」

ふわぁぁぁと大欠伸した坂本が争う4人の元にノッソリと歩いてきた。

そして。

「ん?花奈、なして頭にウ○コば乗っけてるがか、アハハハハハハハー」

瞬間花奈が坂本に矛先を向けたのはもう言うまでもなかった。




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