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「#幼馴染」のBL小説を読む
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甘い罠[1/6]

朝起きて確認するのは本日の自分の当番表。

今日は朝のうちに風呂掃除、配膳、買出し、夕飯作り。

よしっ!!

気合入れて風呂掃除に向かう。

真撰組で働く男衆は今の時間は朝の稽古で一汗掻いていて。

その後風呂場でシャワーを浴びる。

だから今のうちに清掃なんだけど、これがなかなか大変だ。

だって彼らは一般庶民よりちょっと汗かきで、脂ぎっているので、大きな浴槽にコビリつく垢というものを落とすのに。

力と勇気が必要なんだもの。

躊躇したら、ダメ、取れないから!!

清掃中、の看板を立て。

着物の裾を帯に挟んで、いざ!!尋常ならざる浴槽へと勝負を挑む!!!

「いい眺めでさァ」

ガラッと開けた浴場で、その人はニヤリと笑って立っていた。

「…お…きた、さん?」

「おはようごぜェやす、花奈。見えてやすぜィ、ピンクのフリフリ」

呆然とする私の耳に届いたのは、いつの間にか隣に来ていた沖田さんの低い声。

耳元でダイレクトに伝わってきたソレに首を傾げた。

ピンクのフリフリ?

「っ!!!!!!!」

慌てて私は着物の裾を直す。

ピンクのフリフリって、私のパンツじゃないかァァァ!!!!

「チェッ、いいじゃねェか、減るもんじゃねぇだろィ」

…だから、近い、近い、近いっってば!!

何故耳元?何故?

いや、それより何故あなた裸なのォォォォ!!!!!

「オレのも見えたんだろ?だったらお互い様でィ」

「見てないです!!」

「いや、見たね?ウソ言いやがったら、どうなるかわかってるんだろうねェ?」

「…見えました、ハイ」

最早涙目だ、私だって見たくて見たわけじゃないもん!!

そこに沖田さんの沖田さんがあったから目に入っちゃっただけで。

何でまだ男性経験すらないのに、そんなもの見なくちゃならないんですか?

というか、肩抱かないで、何かこすり付けてこないでェェェェ!!!!!

「なァ、花奈?」

「ハイ」

「やらせろィ」

「!!!!!!!!!!」

ニヤリと笑うその黒い微笑みに、持っていたデッキブラシをブンと振りかざしてクリーンヒットした瞬間に。

走って逃げた。

貞操が、私の貞操がァァァ!!!




「ど、どした?花奈」

泣きながら走っていた目の前に現れたその人に抱きついた。

「ひっ、土方さんっ、ヤバイ、あの人ヤバイ」

「…総悟か」

ため息をついた土方さんが呆れたように私の背後へと目をやる。

「ヤバイのは花奈ですぜ、土方さん。オレ今童貞奪われそうになりましたから」

その声に恐る恐る振り返れば、下半身にバスタオル巻いて、脇腹にデッキブラシの跡をつけた沖田さんが立っていた。

「っ、違っ」

「オレがシャワー浴びてるとこにワザワザ誰も立ち入らねェように清掃中の看板立てて、あられもねェ姿で忍んできたんですぜィ?」

嘘だ、嘘だ、嘘だっ!!

ブンブンと首を横に振って違うと訴えた私に土方さんも目配せでわかってると。

「総悟、あんま女中イジめて楽しんでんじゃねェぞ」

「イジめてやせん!イジめていいのは女中じゃねェ、花奈だけでィ」

イ、ジメてるって認めたじゃないかっ!!

「花奈、ここはもういい。風呂の他にもまだ仕事があんだろ?そっち行っとけ?風呂は今日はもう誰かにやらせっから」

土方さんはそう言って沖田さんからやんわりと私を引き離してくれて。

胸を撫で下ろしながら食堂へと急ぐ。

背後に纏わり着くようなあの黒い視線を感じて背筋に悪寒を感じながら。






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