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溶けるチョコ[1/3]

「銀時〜?入るよ〜!」

万事屋の玄関、黒いブーツが一足。

神楽ちゃんも新八くんもいないとくれば。

ヤツは1人で昼寝かアダルティなDVDでも鑑賞してっかもしんない。

「入るよ?」

万が一1人アダルティな場面に遭遇してお互いに気まずい思いをしないように大きめに声をかけてから襖を開けると。

何のことはない、今週号のジャンプをソファーに寝転んで読み漁っていた。

「よォ」

チラリと一瞥してまた本を読む。

まァ、あれですか、空気みたいなもんですか、私は。

「夕べの仕込みで余っちゃったおかず持ってきたからさ。夕飯にでも食べなよ」

そう言いながら台所に行き、勝手に冷蔵庫を開けて持ってきたタッパーを詰めて。

洗い場の横に置いてあった前に私が持ってきたタッパーを回収する。

「いやァ助かるわ、今月マジピンチなんでェ」

「それ先週も言ってた。てか、毎度ね」

「そうだっけ?」

「そうだよ、いい加減ビシッと働いて神楽ちゃんにお腹いっぱい食わしてやんなよ」

「はァ?アイツのお腹いっぱいってどこにあんの?宇宙の果て?」

「…ま、底なしなのは確かだろうけど」

思い出しながら苦笑するのは、先日持ってきてあげた1升分の炊き込みご飯を1人で平らげてしまって銀時や新八くんに涙目で抗議されてるのをニヤリと笑って勝ち誇ったような顔をしていた彼女の姿。

3年前、飲み屋で銀時と出逢った。

同い年で気が合って、気づけば仲間?いや、親友?

最初は身の上話を真に受けて、貧乏ながら他の家の子を預かって食わせてやっているエラく気風が良くて立派な若者(同い年に若者というのもあれだけど)だと思った。

だから家業の食堂手伝っている私としちゃァ、その子供たちにも銀時にも腹いっぱい飯食わしてやりたくて。

こうして多めに作ってはおかずを運んでくるようになったのだけれど。

ようよう後で聞けば、その子供たちに働かせて自分はパチンコやらで。

ったく、とんでもねえマダオだってのは長い付き合いでよくわかっちゃいるものの。

時折見せるコイツの正義感とか?そんなんに絆されて今もこうして飯運んできては怪我なんかしてないか?と様子を見に来てた。

「あ、なァ、今日って何日?」

台所から戻ってきた私にようやく掛けて来た声はそれ。

「ん?14日だけど?」

「だよなァ」

チラリと横目で私を見る。

「ないから」

「エ?!」

「何か期待してるようだけど、今年もないから!!」

「オイオイオイ、3年だぞ、3年!!3年こうして顔つき合わせといて今までに一回もお前からチョコ貰った試しがねェんだけど」

「でしょうね、あげた試しがないもの」

「何だろうねェ?人情味が薄いっての?大体あれだよ?世話になってる人間にゃ義理でもやっといた方がいいと思うよ」

「ああ、だったら私はあんたからどんくらい貰えんのかね?世話してても世話になった覚えはないからね?」

「チェッ、相変わらず可愛げのねえ」

「結構、結構、可愛げなくて。大体あんたにゃ、私じゃなくてもチョコ貰える相手がいっぱいいるじゃないのさ」

ソファーの横に置いてある色取り取りの包装紙。

食いかけなのか部屋中に甘い匂いが漂っている。

「そんだけいっぱいあんだから、神楽ちゃんや新八くんにも分けてあげなさいよ」

「エエエエエエッ?!糖分分ける義理とかねえし」

ガキか、お前は。


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