そして溢れた[4/6]
「遅ェや…」
イライラと爪を噛む沖田さんが見上げたのは時計で。
それはもう二時間を越えていた。
その間に手術室に走る看護士はいくつもの輸血パックを何度も抱えていて。
ようやっとランプが消えたのは3時間になろうかという頃。
「…今夜が峠です」
手術を担当した医師の言葉にその場にいる全員が覚悟を決めたように俯き唇を噛み締め肩を震わせる。
本来ならICUは医師と看護士のみ。
けれど。
「どなたか、近藤さんに呼びかけてくれる親しい人はいませんか?」
そう言った医師の言葉に隊士のほとんどは土方さんを見ていて。
だけど…。
「最後に、近藤さんが気にしてたのは、あんただ。花奈さん」
ついててやってくんねェか?
自分だって側にいたいだろうに。
土方さんの真っ直ぐな視線に打ち抜かれたように。
「…お願いします!!私、側にいたいです」
そう答えると。
「頼みまさァ…、まだ逝かせねェで下せェよ」
沖田さんの真剣な眼差しに、しっかりと頷いた。
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