そして溢れた[1/6]
近藤さんが怪我をなされた。
飛び込んできた沖田さんの頬や服には血飛沫。
息を切らしながら。
「早く…早く、来なせェ」
そう堰き立てられる。
何があったの?!
沖田さんの言葉に取るものも取り敢えず外へと飛び出せば。
「乗ってくれ」
やはり血まみれの土方さんがパトカーの運転席から私を見ていて。
滑り込むように助手席に乗る。
追うように走ってきた沖田さんもまた後ろの席へと座るとすぐに車は走り出す。
「あ…、の…、近藤さん…は」
「…病院だ、今頃手術中だと思うが」
手術?!
その言葉に一気に血液が逆流したかのように、耳の中で心音が激しく打つ。
「…怪我を、されたのですか?」
「ああ…、ヤツら揃いも揃って近藤さんばかり狙いやがって」
偽の情報により敵のアジトへと踏み込んだ。
そこで待ち受けていたのは情報をはるかに超える敵の数で。
真選組は一人一人分断されて戦いざるを得なかった。
その中で聞こえたのは。
『近藤だ、近藤の首を狙え』
『他はいい、近藤だけ狙え、ヤツさえやりゃァ真選組なんざ終わったも同然!!』
その怒号に土方も沖田もすぐに近藤の元へと駆けつけたけれど。
『やったぞ、退けッ!!退けェェェッ!!近藤は始末したァァァ!!!』
蜂の子を散らすように去った後で。
複数の刺し傷により倒れていたのは…。
『近藤さんッ!!目ェ開けてくれよ、近藤さんッ!!!』
土方の呼びかけに近藤が呻く、そして。
『…ト…シ…?』
薄らと土方の腕の中で目を開けた。
『…油断…しちま…なァ…』
苦しそうにそう呟く。
呟いただけで、口から溢れ出す血。
『喋るな、近藤さん!!今救急車を呼んだ!!』
『…花奈…さんに』
『アァ?』
『…行けなくなって…ゴメンって…』
そう言ったきり近藤は意識を失った。
「行けなくなってゴメン、だと」
辿り着いた病院の赤々と灯る手術中のランプ。
「…そんなこと、どうだって…」
苦しい時に話すようなことじゃないのに。
「あんたは迷惑だったかもしんねェが」
「え?」
「近藤さん、あんたに逢いに行くの、いつもいつも楽しみにしてやがってな」
隣に座る土方さんの言葉に項垂れた。
いつだって。
いつだって、あの人は。
どんなに私が冷たく断っても、それでも逢いにきて。
私を指名する。
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