もう一度だけ[7/7]
少しずつ少しずつ遠ざかる背中に。
見えなくなって、ようやっと。
「…当分、って何だよ!!!」
走る、走る、走る!!!
納得できねえ、お前が何を言ったって。
「銀ちゃっ」
その肩を掴んで振り向かせて、思い切り抱きしめる。
「責めりゃァいいんだって、それでもお前が笑ってろってんなら、ずっと笑ってやる」
「何、言って」
「いつか、なんてオレァ待つ気ねえ、今すぐに」
「っ」
「今すぐ花奈が欲しいッ、…花奈しかいらねえの…。花奈がいねえと笑えねえんだってば」
「…自分勝手…」
「ああ、そうだよッ」
「威張らないでよ」
クスクスと花奈が笑っていて。
オレはそれに顔を上げる。
「…浮気モノはゴメンです」
「っう…」
「私しかいらないなんて、どの口が言うの?」
タジタジとなり冷や汗を掻くオレに花奈は。
「あれ?それでも笑うんじゃなかったっけ?」
と首を傾げて笑いやがるから。
「…バァァァァカッ!!大笑いしてんじゃねえか!!!」
笑ってみたら、花奈の指がオレの頬を撫でていて。
情けねえことに、泣いてるし、花奈の前でっ!!!
「明日から…笑ってくれる?」
今日は、泣いてもいいよ?そう言う花奈の肩に突っ伏して。
「…泣いてねえ」
と顔を埋めた。
「二度目はないよ?」
万事屋のソファーでサラリと笑顔で言う花奈に、自分から差し出す誓約書は。
婚姻届。
「お前が本当に許してくれた時に出してきて?」
不安そうに手渡すと。
「…いつになるのかなぁ?」
笑った瞬間に落ちたそれはきっと。
別の涙、だよな?
今度はオレがその涙、受け止めるから。
…オレの側で笑ってて?ずっと。
・
アトガキ
久々に銀ちゃんの切ないのを書きたくて。
ええ、自分の欲求に負けました、長編はまた来週(オイィィ
だって銀ちゃん不足だったんだよォォォ
銀ちゃんに縋られたかったんだよォォォ、捨てないで、って(笑)
2014/1/17 茅杜まりも
←
目次へ
[7/7]