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もう一度だけ[4/7]

1週間前だったか。

「エ?!」

ストーカーから護って欲しいとの依頼を受けた。

めっちゃ美人な子。

24時間一緒に過ごすこと、5日で。

ストーカーとっ掴まえて、真選組に引き渡して、その翌日のこと。

オレんとこに尋ねてきたその子が差し出したのは依頼料。

そして。

「…今日は、あの…女性は?」

先日依頼に来た時は花奈もいたから。

「ああ、今日は別件で外出てる」

「そう、ですか」

ソワソワと辺りを見回していたその子が突然。

「あ、のっ!!!」

「ハイィィィ?!」

突然出した大声に驚いてオレも大声で返答。

「あの…彼女、さんですよね?この間の方」

「そうそう」

「やっぱり…」

やっぱり?

俯くその子を覗き込むと。

「好き…なんです」

「エ?!」

「…ごめんなさい、彼女がいるってそう思ったけど…。一緒にいる内に坂田さんが…好きに、なっちゃって…」

縋りつく腕が震えているのがわかる。

きっと、そう一大決心だったんだろう。

「…うん、悪ィ、な」

「…それでも、いいって言ったら、どうします?」

「ハ?!」

「彼女が、いても…」

頭の中で発する警告音。

ビービービービー鳴り響くのに、何故突き放さねえの?オレ!!

何で逃げねえの?エエッ?!

ダメですか?

何て涙でいっぱいの瞳で見上げられてみい?

理性が吹っ飛びそうだ。

据え膳食わぬは、なんて言うけど。

残る理性はオレにこう言う。

花奈を裏切る気か?と。

いや、裏切らねえ、裏切りたくねえ。

けど、どっかで悪魔が囁いだ。

バレなきゃ、いいんじゃね?

その瞬間に弾け飛んだオレの思考回路は。

その女の艶やかな唇に食らい付いていて。

挙句の果ては、ソファーにまで押し倒しその胸に顔を埋める。

「…ただ、いま」

めっちゃ聞き覚えのあるその声にハッと顔を上げた。

頭の中は真っ白、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。

「お、お邪魔しましたぁ」

慌てて乱れた胸元を直し女は逃げ去って。

残されたのは、オレを冷ややかに見下ろす花奈と。

「アレ?」と首を傾げて記憶喪失のフリをしてみたオレ。

「…ご飯、作るね」

え?

責めもせずに台所に向かう花奈を追うこともできず。

そのまま逃げるようにパチンコに行き、すまいるでしこたま飲んで酔いつぶれて。

長谷川さんに抱えられて家に帰った時に。

そうだ。

「おかえり」って。

泣き出しそうな顔で。

オレを出迎えてくれた。

ああ、ヤベ。

心当たり、あった…。

今まで忘れてたのは。

あれが事故で、翌日から何もなかったかのように花奈もいつも通りに笑っていたからで。

抱き寄せると嬉しそうに笑ってた…、そうだったよな?


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