もう一度だけ[3/7]
「銀時ィ、あんたホンットに花奈が出て行った心当たりないのかい?」
「あるわけねえだろ、ババァ!!オレと花奈は愛し合ってたんですぅぅぅ」
突っ伏したカウンター。
その横で猫耳女がオレを嘲笑って。
「ドウデスカネ?稼ギモ悪イハ性格も悪イハ、オマケニ天パ!坂田サァン、オマエミタイナ男ニ、花奈は勿体無カッタネ、別レテ正解ネ!」
「うっせー!!!」
わかってんだよ、んなこと。
オレが何したって、アイツは文句一つ言わずについてきてくれた。
金がねえって知れば、バイトに出かけて家計を助けてくれて。
キャバクラで飲んで帰ろうが、何も文句言わずに。
笑って「銀ちゃん、おかえりっ」って…。
もう、それ聞けねえのかよッ!!!
「銀時様、お登勢様、私は昨日花奈様が川辺でボンヤリと座っていたのを見ました」
タマの言葉にハッと顔を上げると。
「泣いていました…、そういう時私はどう声をかければ良いのかわからずに…。申し訳ございません、銀時様」
泣いていた…?
花奈が?
そういや、アイツが泣いた顔なんて全然見てねえ。
いや、泣き出しそうな、ってのは見た。
今日、アイツが出て行く時、と。
そう、あん時…。
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