大好き。[4/5]
「女の子が刺されたぞォォ!!」
悲鳴が上がっていた。
返り血を浴びた浪士が仲間に引き摺られるように逃げていくのが目の端に映った。
あんなにいた野次馬が巻き込まれないようにと逃げていくのも見える。
そして、呆然と倒れこんだ私を見下ろす銀ちゃんが見えたんだ。
「銀ちゃ…」
良かった、銀ちゃんは無事みたい。
「銀ちゃ…」
泣かないで?
どうして泣いているの?
「銀ちゃ…」
「喋るなッ」
うん、何だか喋るのがしんどい。
でも、
「銀ちゃん…大好き」
それだけは、今伝えなくちゃいけない気がして。
「いいから、喋るなッ!!」
そう言うと私を抱きかかえ町を走り出す。
あぁ、銀ちゃんの腕の中、いつも暖かい。
本当に本当に温かいよ?
微笑んでもう一度大好きとその胸に擦り寄れば。
「オレも大好きだ、クッソ!!好きすぎて、もうどうしようもねェじゃねーか!!だから、逝くな、オレの側にいろ!!!」
銀ちゃん?
大好きって、そう言った?
「幸せすぎて死ぬ」
嬉しくてそう呟いた自分の声があまりにも掠れていて驚く。
「バァァァァァァカッッッ!!!そんなんで死なれたら、オレァどうしたらいいんだよ、花奈!!チキショー、オレが見えるか?!」
「…ん?あんまりよく見えない」
銀ちゃんの優しい顔が見たい。
銀ちゃんの微笑んだときの目が大好きだ。
「銀ちゃん…大好き」
どれが最後になるかわからないなら、やっぱりこの言葉を私は選ぶ。
銀ちゃん、大好き、大好き、大好き。
「オレだって、オレだってなァ!!!!!」
あぁ、もう何も聞こえない。
銀ちゃん、あなたが見えない。
銀ちゃん、…銀ちゃん…。
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