大好き。[3/5]
ある日、店の買い物を頼まれて街に出た。
ワァワァと騒いでたくさんの人がいる中心で動いたのは銀色の頭。
銀ちゃん?
たくさんの野次馬を掻き分けてその姿を見守ろうとその輪に入れば、目撃したのは、何故かたくさんの浪士に囲まれた銀ちゃん。
…銀ちゃんは強い。
それは噂で聞いていた。
だから、きっと大丈夫よね?
不安な心を押し殺して、祈るようにその様子を見守っていたけれど。
野次馬の中で必死に目を瞑って祈っていた私は、いつの間にか人ごみの一番前から弾き出されて、その睨みあう戦場の最中に投げ出されてしまった。
…ウソ…?!
「花奈っ?」
銀ちゃんは慌てて私を立ち上がらせてくれて自分の背中へと庇う。
「ご、ごめん、銀ちゃん」
「いいから、オレから離れんなよ」
な?といつものように。
きっと私を落ち着かせるために、優しく微笑んでくれた。
銀ちゃんの背中は頼りがいがあって、何だかきっと大丈夫って、そう思った。
次々と倒れていく敵は、木刀で峰打ちにされていて。
死んでるんじゃないってわかって安心する。
銀ちゃんの剣は、銀ちゃんみたいなんだな、ってこの人を好きになったことを誇らしくも思った。
だから。
目の前の敵に向かって刀を構えた銀ちゃんの横から浪士が2人切っ先を真っ直ぐに銀ちゃんの心臓めがけて走ってくるのが見えたとき。
お願い、殺さないで。
咄嗟に足が動く。
動いたんだ。
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