君に届け!3[5/6]
泣きじゃくる花奈の涙拭おうとしたら、オレの手も花奈の顔も土塗れだってことに気付いて。
ポケットからハンカチ出して拭いてやった。
「今、断られても…また告白すっから」
向かい会って花奈を見据えると、怯えたような目をしていて。
怖かったんだ、ってこと…今ならよくわかる…。
「何度でも、告白すっから…お前がまた『懲りないね』って笑って、オレの手握ってくれるまで…だから、それまでお前の隣開けといてくんねえ?」
「っ、ぎ…」
「好きだ、出逢ったときよりずっと…別れた後でもっと、お前が好きになってる…。二度とバイバイなんてしねえから、だからっ!!!も一回だけ、付き合って下さい!!!!」
ダメ元で差し伸べた手。
今、じゃなくていい、いつかもう一度で…。
だけど…。
「…銀、と…手、繋ぎたかった、もう一度…」
小さい震えた掌がそっとオレの手に触れて優しくそれを包み込む。
「花奈?」
今、…コレ、何が起きてる…?
「…怖い、けど…本当はまだすごく怖いけど、銀の隣にいられない方が怖いっ…。銀の隣、誰かに取られちゃうの…怖いの」
見上げた花奈はベソ掻きながら、それでも一生懸命に微笑んでいて。
その顔見てたら、さ…。
「銀…?」
花奈の手がオレの頬に触れる、冷たい感触…。
ダセエ…何、この目汁…。
咄嗟にそれを擦っても、既に花奈に見られた後で。
恥ずかしくなって、花奈を胸の中にもう一度掻き抱く。
「…許してくれんの…?」
「…許してなんかない、よ…?もう一回って銀そう言ったじゃない…、だからもう一回…ここから」
泣き笑いの花奈の頬に流れる涙を。
次から次へと溢れる涙を飲み干すように口付けて。
そのまま頬からゆっくり下がって、試すようなキスを一つ。
「…銀っ」
「ん?」
「銀っ、銀っ、銀ン…」
花奈の口から、何度も何度もオレの名を呼ぶ声が愛しくて。
この触れられなかった間に夢にまで見た花奈の柔らかい唇を何度も奪う。
花奈の口から漏れるこの甘い吐息がたまんねえの。
誰にも聞かせたくなんかねえのっ!
ずっと、コレオレだけのもんなの!!!
もう十分味わった後で、抱きしめたまんま、花奈に問いかけた。
「今日…オレの誕生日って知ってた?」
「…忘れるわけ、ない…でも、何も用意して」
「いらねえよ、けど一個だけお願いしていい?」
「ん?」
オレのこと、好きって言って?
耳元でそう囁けば。
苦笑いした花奈がそっと背伸びして。
「…銀…大好き…」
泣き笑いしてそれからもう一つ。
「誕生日…おめでと…」
これしか、ないけど…と。
頬に触れる優しい唇に。
「最高です!!ありがとォォォォ」
そう大袈裟に抱きしめて。
「けえるか?」
差し出した手を、真っ赤になった目を優しく細めて握ってくれる久し振りの花奈の手の感触に。
きっとこの先何があったって、オレはお前以外好きにならねえと勝手に心の中で誓う。
届いた…もんな。
「…来年も再来年もずっと、オレの誕生日一緒にいて?」
「ズルイよ、銀だけ…」
「あ?」
「私の誕生日も…いてね?」
心地いい右に感じる花奈の温もりに、素直にうんと頷く。
「…ところで今年あのまんま付き合ってたら、オレに何くれるつもりだった?」
不粋な質問に。
「…内緒」
花奈が唇尖らしてるんだけど、真っ赤な顔で?
「もしかしてえ、アレですか?!花奈ちゃんをくれるつもりだったりなんか」
「…銀の…そういうデリカシーないとこっ」
キライと言いかけてるのを慌てて止めようとしたら。
その顔が本当に子供みたいに膨れていて…多分、オレの言ったこと。
「そ、そのプレゼントって今日有効とか」
「…そこまで甘くないデス!!付き合って1年だし…銀になら…って思ってたけど…もう1年お待ちください」
「あーーーーーーー!!何してくれたんですか?!あの時のバカなオレ!!!1年ですよ、こっから1年?!ここまで1年だってえのにィィィ」
ギロリと睨み上げてくる花奈の視線にタジタジとなって。
「いえ、あの罰ですよね、ハイ」
項垂れたオレに花奈はヨシヨシと髪を撫でてきて。
「…罰が軽くなれば、もうちょい早まるかも、ですので…頑張って」
「花奈っっっ!!!」
ガバッと抱きついてその優しい微笑みを丸ごと食べ尽くす。
このまんま食っちまいてえ、全部全部、と暴走する気持ちにブレーキかけながらだけど。
___________失くしたはずの温もりに触れられる喜び、最高です!!!!
fin
→アトガキ&オマケ
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