君に届け!2[4/4]
「…好きなの?土方のこと」
「…関係ない、でしょ」
「関係なくねえんだけど」
「ただのクラスメイトにいちいち言う話でもないので」
冷たい横顔を向けて立ち去ろうとする花奈の腕をグッと引き寄せた。
バランス崩してオレの腕の中に転がってくるのは計算済みで。
「…ただの、じゃねえよ…」
あれ以来こんなに側で花奈を感じたのは初めてだった。
シャンプーの匂いが鼻腔をくすぐって、抱きしめる腕に力が篭る。
「…離して」
花奈のか細い力じゃ早々逃れらんねえっての。
「気になって仕方ねえんだけど?…知ってる?オレらまだ別れて1ヶ月経ってねえんだけど?なのに、早速新しい男って、そりゃいくら何でもヒドくねえ?」
「…っ!!!」
「男と女じゃ切り替えの早さが違えっていうけどよォォォ、そりゃあまりにも薄情じゃねえの?仮にも1年付き合った昔の男目の前にしてよ?」
「…責められる、覚えないっ」
「は?逆ギレ?何ソレ?マジで腹立つ、お前そんな女だったっけ?銀、銀、って笑ってオレの側にいたじゃねえか、何すぐ他の男に尻尾振るようなダラシネエ女に」
言いかけたその言葉は、花奈の泣き顔で我に返って…。
「悪ィ…調子に乗っちまった…」
泣き顔に手を伸ばすと払いのけられて。
「知ってる?坂田クン…振った方より振られた方が傷つくの」
「…」
「私が何も傷ついてなかった、ってそう思う?あんたのこと忘れようってずっとそう思って…毎日学校来るのもしんどかったのに…、勝手だよ、いつもいつも!!気分次第で私にかまってくるの、もうヤメテ!!早く高校なんか卒業してもう二度とあんたの顔なんて」
「見たく、ねえ?」
そう尋ねると、コクンと頷く花奈、だけど。
だったら、どうして、ンな顔する?!
そんな目でオレを見るんだよ?
見たくもねえってのに、誘ってんじゃねえ。
零れそうになる想いを全部注ぎ込むようにガッツくようなキスをした。
時折、イヤ、と聞こえるそれも全部飲み込ませるように塞ぎこんで…。
思い出せ、…全部。
オレのこと好きだって、大好きだって。
もう一回、思い出して…。
「オイ…イヤがってんだろ?」
その声に花奈を離して振り向けば、土方クン。
ツカツカと割り入ってきて。
涙でいっぱいの花奈の手を引き、オレに向ける鬼みてえな視線。
「最低だな、テメエは」
背中に庇う花奈の心の声をきっとアイツは口にしたんだ。
___________過去って早々取り戻せそうもねえみてえだな…、わかっちゃいたけど。
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