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POKER FACE[3/3]

私を抱いた後は晋助は必ずしばらくずっと抱きしめてくれる。

今夜はそれがヤケに長いのと。

最中に私の名前を何度も呼んだことといつもよりも濃厚だったそれが何故か気になっていて。

何となくそれには理由があるんじゃないかな、なんて思ったのだけれど。

「なァ」

抱きしめられたままでそう声をかけられて。

ああ、やっぱり何かあるんだって思ったけれど。

「ん?」

なるべく不自然にならないように務めていつも通りの返事をする。

「今日、接待なんかじゃねえんだ、本当は。まァ、キャバクラだったのは確かだけどな」

「そう、なんだ」

心がザワッとするのはやっぱり晋助の隣に座った女がいたってことが少し面白くないのと。

さっきは接待って言ったくせに嘘つき、なんて。

絶対言葉には出さないけどね。

「送別会ってやつ。無理やり付き合わされただけだ」

ワシャワシャと私の頭を撫でる手が優しくて、そっと晋助の胸に頬を寄せた。

「誰か、転勤になるの?」

何気なく尋ねたそれは。

「海外だとよ、オレが」

「えっ?」

意味がわからなくて晋助の腕の中で顔を上げると。

「二年間、海外勤務だと。来月から」

表情を変えずにそう呟く晋助に。

頭が混乱して心臓が飛び出そうなほどにドクンドクンと音を立ててるのに。

「そっか、栄転だよね?さっすが晋助、絶対いつかそうなるって思ってた」

晋助の会社は大手の貿易会社だったし、エリートだってのは銀時から聞いてたもの。

「あ、ねえねえ、何か欲しいものある?お祝いに買ってあげる!!あんまり高いのはあれだけど、うん、ちょっとぐらいなら奮発する!!」

だって今までここに来てくれた御礼、私何も出来てないもの。

「お前は?ねえのか?欲しいもの?」

それに私は首を横に振る。

だっていっぱい貰ったもの、私。

晋助に何度だって愛されて、優しさもいっぱい貰っちゃって。

これ以上欲しいものなんてない、ないのに。

「なァ、花奈。一度でいいから、好きだって言えよ」

「…、晋助…?」

意味がわからずに晋助を見つめると。

「ホンット腹立つ女、嘘でもいいから最後ぐらいオレのこと好きだって言ってみやがれ」

言いながら私の頬を撫でて切なそうに眉をひそめていて…。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。

言ったら最後、言わなくても最後。

どうせ置いてく女にそんな残酷なこと言わせないでよ。

言いたくないと思い切り噛み締めた唇に何度も何度も開かせるように口づけされて。

「知らなかっただろ、お前。銀時の家でお前の写真見て、紹介してもらったこと」

「っ、嘘、そんなの」

思わず開いた唇はチャンスとばかりにこじ開けられて貪るような激しいキスなのに。

理性は飛ばずに涙さえ流れる。

「なのにお前何度会ったってオレのこと男としてみてねえし、終いには他の男に告白されたとか嬉しそうに、ふざけんじゃねえよ」

初めて聞く晋助からの告白。

嬉しいはずなのにまるで最後だからと言い逃げされるようで耳を塞いでしまいたくなるのに。

「欲しいもんならあの時からずっと変ってやしねえ。何度抱いてもまだ手に入れられてねえ、お前のココ」

そう言って私の胸を指差す。

「…晋助…」

ずっとそんな風に思ってくれてたの?

ずっと私のこと大事に思ってくれてたの?

なのに私全然気付かなくて。

いつも晋助に振り回されてる気がして。

きっと数居る女の一人にされたんだ、なんて。

そう思うことで一人の夜を乗り越えてきたというのに。

「…手に入れたら、また帰ってきてくれる?私のところに」

まだ言ってなんかあげない、強がったのに。

精一杯の私の意地は涙になって零れ落ちてしまって。

クスッと笑った晋助の指先がそれを拭ってる。

「手に入れられたら、逃がすわきゃねえだろ」

そう言ってゴソゴソとベッド脇のソファーに置いたスーツの上を手繰り寄せて。

布団の中で絡められた指に。

はめられたゴツゴツとした何か。

そっと手を布団から出して見てみると左手薬指に填った銀色のリング。

「好きだって上手に言えたら一生側においてやる」

「っ、何で偉そうなの?!」

「…、いいだろが、こんぐらい。さっきオレから散々告白したんだし」

プイッと目を反らした晋助が割りと本気で照れてたように見えたから。

晋助がずっとずっとね。

今度は私から晋助に告白するから。

私の欲しいものもあなただったのって素直に…。



fin


2015/4/21 言ノ葉 茅杜まりも


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