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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -
君に届け!1[3/4]

ベッドの上に正座して、リダイヤルを押してみた。

出てくれるかわかんねえけど。

…声が聞きてえ。

しばらく鳴った呼び出し音の後で聞こえるのは、少しのため息。

「もしもーし」

『この電話は現在使われておりません』

…あー、そう来ますかー。

「いや、めっちゃ花奈だしね?声」

『…何の用?もう寝るとこなんですけど?』

初っ端から冷たくねえ?

でも引き下がりませんよ?

「寝れなくて」

『は?』

「いいじゃん、お喋りくらい付き合って下さいよ、花奈チャン!!」

『もう、そういった義理もございませんので』

「義理とかそういうムツカシイ言葉使っちゃうんだ、知的だねえ」

『ふざけないでっ!!…あのさ、確認させて?』

確認?!

「何?」

『私たち、別れた、よね?』

…はい…けど。

「…そうだっけ?」

とぼけて見た。

『…いい加減にして』

ピシャリと冷たい低音が怒りを伝えてくる。

「だって」

言い訳しようとしたオレの言葉を問答無用に遮って。

『人のこと振り回さないで、何でかき乱すの?!坂田クン、思い出まで汚さないでよ!!!』

思い出…デスカ。

『やっぱ、もういいや…、なかったことにしたい』

「は?!」

『坂田クンと付き合ってたこの1年をなかったことにするの…、振り回されて傷付けられて、全然楽しくなかった。少しだけのいい思い出もこうして坂田クン平気で踏み潰してくるんだもん、だったらもう要らない。…もう明日からただのクラスメイトでいて』

…ただの…。

全然楽しくなかった、って。

は?

あんなに、楽しかった、って思うのオレだけだったってこと?

あったこと全部白紙にして?

明日からはただのクラスメイトって…。

「マジで言ってる?」

『うん』

「…了解っ」

そのまま通話終了させて。

寝転んだベッドの脇に飾ってあった写真立て。

花奈とオレの初めてのデート写真。

持ち上げて、ぶん投げたら壁に当たってガシャンと音立てて壊れた…。

…あー、こんなんですか、終わり方。

いや、再々終了…。


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