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今君を想う[2/4]

「トシ兄、勲ちゃん知らない?」

廊下をウロウロしながらやってきた花奈に声をかけられて。

「…知らねー」

目を反らすのは。

「嘘?また、すまいる行ったんでしょ!!もう、怪我が増えるだけなのにっ」

唇を尖らせて怒る姿に苦笑する。

「ったく、何でそんなに近藤さんなんだ?」

「何でって。人が誰かを好きになるのに理由なんかいらないでしょ?」

…、おーおー、一丁前に女の顔しやがった。

武州から出るときはまだまだ青臭かったってぇのに。

「玄関に履物はあったんだけどなァ」

ブツブツ言ってる花奈の後ろの柱、コッソリこっちを見てるゴリ、いや近藤さん!!!

お願い、花奈には言わないで!と。

必死にオレを拝む姿を見ると今夜もまた花奈の目を盗みあのメスゴリラの元に向かうつもりらしいが。

花奈に見つかれば面倒なことになるというのをわかっていて隠れてるらしい。

「ん〜なに好きなら、どこにも行かせないように首輪でもつけといたらいいじゃねえか」

そう言うと柱の影で『ヤメテ!!そういうこと言わないで!!』とジェスチャーを送ってくる泣きそうな近藤さん。

「そんなんで縛り付けちゃ可哀想なの!!だけど心を縛れる輪があったなら、とっくに付けておきたかったな。…誰かに勲ちゃんの心が取られてしまう前に…」

ポツンと寂しそうに呟いた花奈の声は近藤さんにも届いたようで。

申し訳無さそうな顔でそのまま玄関の方へは向かわずに自室の方へと歩いていく。

「初恋、なんだろ?」

「うんっ、ずーっと続いてる、凄いでしょ」

ニコッと嬉しそうに笑う花奈を見てると。

「すげえな、そりゃ。近藤さんが愛のハンターだって言うなら花奈は愛のハンターハンターだな」

側にいられる今が一番幸せなんだろうな、と微笑ましく思う。

近藤さんは自分が追うことはあっても追われることはなかったから、花奈の日々の突進に相当慌ててるけど。

「…トシ兄、全然うまいこと言ってない、それ。全然面白くない、それ」

ッチ、と花奈の毒舌に舌打ちしたけれど。

「もう一回探してみろよ、案外部屋にいるかもしんねえぞ」

「うんっ、探してくるっ!!あ、励ましてくれてありがとね、変な励まし方だったけど」

「変は余計だろ!!」

パタパタと駆けて行く花奈の背中を見送ってると。

「そっとしといてやった方がいいんじゃねえんですかィ」

「総悟」

いつから見てたのか、総悟が現れた。

…ここの連中はどいつもこいつも山崎並に気配を隠すのが得意らしい。

「花奈だって多分わかってらァ、近藤さんが振り向かねえことぐらい」

「そうかもしんねえが」

ほっとけねえだろ、あんな風に必死に近藤さんを探してる姿を見たら。

「…近藤さんも見る目がねぇや」

首を竦めてオレの前を通り過ぎる総悟を見ればわかる、同じように心配してること。

花奈の気持ちが実ればいいのに。









オレの部屋を花奈ちゃんが再び訪れたのはそれから1時間後ぐらいだっただろうか。

「勲ちゃん、入るね」

入ってもいい?じゃなくて。

入るね、が花奈ちゃん流。

なので慌てて枕元の灯りを消して寝たフリを決め込む。

オレは今日はすまいるには行きませんよー!!

大丈夫なんで、ちゃんと屯所で休むんでー!!

そうして目を瞑るオレの側に座る気配。

頬にそっと触れるのは花奈ちゃんの手だろう。

「勲ちゃん、寝ちゃった?」

ハイ寝てますよー。

狸寝入りを決め込んだ、はずなのに。

「ッ?!」

柔らかく温かなものが布団の中に入ってくる気配。

「ちょ、花奈ちゃん!!何やってんのォォォ?!」

「あ、やっぱ寝たフリしてた」

無理やりオレの腕の中に入ってきて月明りの中で見えた花奈ちゃんはふふッと笑っていて。

「勲ちゃんと一緒に寝たいの」

「ッ、何ッ、何言ってんの?!何言っちゃってんの?!エェェェェェッ?!」

「勲ちゃん、シィッ、声が大きいよ?皆起こしちゃうでしょ」

そう言ってオレの口を人差し指で触れて。

「…抱いて、なんて言わないから安心して?勲ちゃんと一緒に寝たいだけ」

クスクス笑いながらオレに寄り添ってくる。

…、ヤバイ、ヤバイって花奈ちゃん!!

小さい頃の花奈ちゃんじゃないんだよ?

どっちかってえとボリュームある肉まんみたいな、む、む、胸とか?

腰はキュッってしてるのに、お尻がまたいい感じにボンっと、ってアアアアア!!

ムラムラしちゃうからァァァ!!

どうしようもなくムラムラしちゃうからァァァァ!!!

なのに。

ふわぁぁぁと欠伸をした花奈ちゃんの口元からすぐにスゥスゥと寝息が聞こえてきて。

ムクムクと起き上がっていた勲ジャスタウェイも少しだけ萎む。

参った、本当に参ってる。

そんな風になんか思いたくないのに、花奈ちゃんがこうしてオレの側に来る度に。

どうしたって意識しちゃうじゃないか。

妹のはずだったのに、いつの間にか女になってて。

なのに無邪気にオレに抱きついて好きだ、好きだ、なんて言われたらさ。

…お兄ちゃん、じゃいられなくなりそうで。

気付かれぬようにそっと触れる唇。

柔らかくて、旨そうで…。

スイッと近づき啄ばむ寸前で我に返る。

ッ、オレ、何考えてるのォォォ?!

いくら飢えてるからって花奈ちゃんだけはダメ、絶対ダメ!!!

そうだ、無の心だ、般若心経だ!!

落ち着け、勲ジャスタウェイィィィ、いや落ち着くのオレェェェェ!!!




「勲ちゃん、目の下隈?」

「ん?これは、メークだよ」

まんじりともせずに朝が来て、花奈ちゃんのおはようの声がかかるまで目を瞑って。

身動き一つ取れなかった。


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