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「#幼馴染」のBL小説を読む
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コトノハ1周年企画御礼リク[21/21]

時折訪れては三味線を弾き、酒を飲み。

気が向けば私の膝に寝転んで煙管をくゆらす。

いつ来るか、なんて約束もないし。

それにまた来るなんて言葉もないから。

まるで猫のような人。

その黒髪に指を絡ませ、優しく撫でると。

その隻眼は少し細くなる。

眠いのだろう。

「お泊りになられんすか?」

尋ねて見ると不機嫌そうに私を見上げて。

その顔はまるで言わずともわかるだろうと。

「…なァ、此の糸、お前の本名は?」

「さぁ?もう遠い昔のこと。花奈とでも言いんしたでありんしょうか」

クスクスと笑うと、彼も苦笑する。

「遠い昔ってのは、お前、そんなに長くこの世界で暮らしんのか?」

「ええ、それはもう」

物心着く前に吉原に捨てられていた。

だから、私はこの世界しか知らずに生きてきたから。

「身請けの話なんざ上がらなかったのか?」

「いくつか御座いんした、けれどわっちの好みではなかったので」

クスクスと笑うとやはり彼も目だけで笑う。

「気位の高ェ女だな、お前は」

「そうでありんしょうかぇ?でもわっちは待ってるでありんす、いつかわっち好みの殿方がわっちをここから連れ出して自由な世界へと導いてくれるのを」

「…その時にゃァ、こっから消えちまうってのか?」

「そのつもりでございんすよ」

ふと、髪を梳いていた手にその人の指が絡まる。

「高杉様?」

「晋助でいい」

起き上がった彼はいつものように、私の首筋へと口付けて。

味わうように唇を甘く噛み締めていく。




どんな気まぐれなのだろうか。

ことが終わればいつもまた酒に手を伸ばす人が。

今日は私を抱きしめたまま、腕枕というものをしてくれている。

「…お前の好みったァ、どんな男だ?」

「聞いてどうなさるおつもりで?」

枕話に他の男の話なぞ聞いても面白くないだろうに。

「オレはどうだ?」

「ご冗談ばかり」

「冗談かどうかは知らなくていい、どうなんだ?って聞いてんだ」

「率直に申し上げんすと、素敵なお方だなと思いんす。世間に追われる身なれど、わっちのような遊女にもお優しいし、何よりわっちはその目が好きでありんすぇ。 それゆえに、ぬし様に抱かれるのは光栄でございんす」

そう、いつからか心待ちにしていた。

あなたが初めてここに現れた日から。

今度はあるのか?だとしたらいつ来る、だなんて。

浮かれる自分をいつも打ち消していて。

「だったらオレはお前の好みってことか?」

クックックと意地悪そうに笑うから私にだって意地がある。

「そうかもしれませんねぇ」

そうだとも違うとも取れる返事をし、その白い胸に顔を埋める。

もしかしたら、これが最後の夜かもしれない。

次などないのかもしれない。

猫のように気まぐれな人はきっと一箇所には根を張らないだろう。

だから。

「花奈…、お前を飼ってやってもいいがァ?」

彼のその言葉に耳を疑った。

「酔ってるのでありんしょう」

「生憎、オレァ酒にゃ強いんでな。悪いが酔った勢いでんなこたァ言わねぇよ」

だとしたら本音だとでも?

蝋燭の灯りの中で見えた高杉さんは優しく微笑んでいるかのように見えて。

思わず本音が漏れてしまいそう。

「…ぬし様がわっちを攫ってくださるのでありんすか?」

「フッ、堂々と攫ってやらァ。次の満月、迎えにくるまでに身の周りの支度をしておけ。いいな、花奈」

オイ、誰かいねェか?と禿を呼びつけて、店の主人を呼べと言い放つ。

「今更、イヤだなんて言わせねェ」

「いちどもイヤだなどと申し上げたことはありんせん」

微笑んだ私にもう一度堕ちてくる唇。

猫のようだと思ったこの人に。

飼われることとなろうとは。

どうぞそれが気まぐれなんかじゃありませんように。

次の満月まで祈るばかり。










明久様御題
高杉
お前を飼ってやってもいいがァ?


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