君に届け!1[2/4]
「…別れた?」
あれから1週間、沖田クンがオレを見てそう聞いてきた。
「…別れた」
「へえ、ならいいですがねィ」
「何?」
何かこう意味ありげな視線にその真意を迫ると。
「花奈、もう彼氏できたみてえでさァ」
「は?!」
嘘だろォォォ、オイィィィ!!!
「誰だよっ」
「隣のクラスにいるじゃねえですかィ、真面目が制服着てるような顔したヤツが」
「あー、あの面白みのねえ瞳孔かっ開いた風紀委員の?」
「そうそう、それでさァ」
「エェェェェ?!土方かよォォォ!!!」
何で、アレなの?何で?エェェェェ?!
「花奈、修学旅行の実行委員やってるでしょう、で隣のクラスの実行委員がヤツでさァ。昨日も委員会の帰り一緒に帰ってやしたぜ」
「アイツ委員やりすぎじゃね?ってそうじゃなくって、誰情報?付き合ってるって?」
「オレ情報」
「なら、いいや」
…うん、沖田クンのは宛てになんねェし。
…たまに、鋭いけど…いや、たまに…それが、たまにだから怖いし?アレ?何動揺してんの?オレ!!!
「まァ、別れたってんなら関係ねえでしょう?」
「ま、まァね?!振ったのオレからだしィ!!花奈がとっとと男作ろうがそんなん関係…アレ」
トンと机の上に置かれたのは修学旅行のしおり。
配ってるのは、花奈…。
アレ…。
落ちてくる冷や汗と花奈の冷たい視線。
「おー、修学旅行のしおり、テンション上がりまさァ」
とっとと沖田クン逃げてったし…。
「あ…と、花奈サン」
「何?坂田クン?」
…う、うわぁ!!!
超絶冷てえ坂田クン、来た、コレッ!!
「その、さっきの聞こえてたり」
「うん、聞こえた、どうでもいいけど教室でそんな話しないでくれるかな?…迷惑なの、私の名前出されるの」
「…悪ィ…でさ、土方クンと」
「…関係ないんでしょ?」
「え?!」
「私がどうしようが坂田クン関係ないって言ってたよね?さっき」
「…ハイ」
「だったら関係ないんで」
降り注ぐのは他人を見るような花奈の目。
『銀、帰ろっ』
放課後になると嬉しそうにオレに駆け寄ってくる。
『銀っ!!宿題、やって来なかったの?!ねえ、ホラ早く写して!!』
宿題忘れたオレより焦った顔してる花奈。
『…好き、だよ?』
オレのこと好き?
そう問えばいつだって恥ずかしそうにオレを見上げて、そう言ってくれて。
『銀の手は、いつも温かいなァ』
そう言ってオレの手を握る花奈が可愛くて。
『銀』
オレの名前を呼ぶ花奈の甘い声が。
今は他の男の名を呼んでるってえの?
花奈の左隣は一週間前はオレのモンだったはずで。
なのに、今はもうヤツのモンなわけ?
…坂田クン、って…遠いだろ…この感じ…。
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