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コトノハ1周年企画御礼リク[16/21]

視線を感じて振り向いた先にいたのが、副長と呼ばれる人だった。

「…今日からか?」

「はいっ!!」

パリッとした新しい隊服に身を包んだ私を見下ろすのは。

噂に聞く鬼ではなく、柔らかな視線で。

「っ、が、頑張ります!!!」

恥ずかしくなって両の拳をギュッと握ってガッチガチになりながらそう声を張ると。

「あんま、最初っから気張るんじゃねェよ、もたねェぞ?」

フッと笑って通りすがる途中でそっと肩に置かれた手。

すぐに離れたはずなのに、いつまでもその温もりを感じてしまうのは。

振り向いた時には既にその背中だけで。

私はそれを見送る。

土方十四郎、真選組副長。

…優しそうに笑ってくれた人。




「っう〜」

「ゴメンね、花奈さん!けど、もうちょっとだけ耐えて?」

「だって痛いっ」

「あんま痛くしないようにするからね、だから力抜いて」

山崎さんの言葉に頷いて息を大きく吸った瞬間。

「山崎、テメエ、花奈に何してやがる!!!」

ガラッと開いた医務室の扉。

そこにいたのはいつものように瞳孔の開いた鬼の副長。

さらし姿でベッドにうつ伏せになっている私と、私の背中に手を当てている山崎さんはその形相に引きつった。

「もう一度聞く、山崎。花奈に何しようとしてやがる?」

「っ、何って、手当てですよ、副長!!!」

バッと白旗を揚げるように高く掲げた山崎さんの手には。

消毒液と包帯。

「…」

それを見るなりツカツカと私の方へとやってきて。

背中を見ている。

「花奈、何でこんな怪我」

「町人同士のケンカの仲裁に入ったんですよ、花奈さんは。酔っ払いだったんで頭に血が昇った男が花奈さんに斬りかかって、それで」

「で?男は」

「逮捕しました、ちゃんと」

私が口を挟むとギロリと副長に睨まれた。

「ッチ、もういい山崎。男の取調べに向かえ」

「っえ?でも」

「いいから!!」

そう言うなり山崎さんの手から包帯と消毒液を奪って追い出してしまう。

…まさか、副長が手当て、とか…。

「一人で出来ます、副長!!」

慌てて起き上がった瞬間、背中の痛みに顔が歪むと。

「いいから、寝とけ。少し滲みんぞ?」

労わるような優しい手当て。

包帯を巻くときだけ、起き上がらせてくれて背中から斜めに巻いてくれた。

「…すいません、お手数おかけしちゃって」

隊服を着て振り向くとこちらを見ないようにしてくれたのか背中を向けている副長の姿。

「しばらく痛むぞ」

「はいっ」

「ったく、無茶しやがる」

はぁぁっとため息つかれて、申し訳なくて俯いている。

「3年か?」

「え?」

「お前がここに来てから」

「はい」

「最初から無茶しそうなヤツだとは思ったが…、怪我多すぎんぞ」

「すいません」

…いつもいつも言われるそれに益々小さくなると。

「頑張るのはいい、けどな。あんま無茶しねえでくれ。オレの寿命が縮まる」

「副長の?」

「…、鈍いんだよ、お前は、全く」

クックックと笑いながら、私の頬をムギュッと抓上げて。

優しく微笑むから。

ドキドキがいつも大きくなっちゃう。

鈍い、って何?

そう聞きたいのに、何故か喉の奥で言葉が引っかかってしまっているようで。

息すらもまともにできなくて。

こんなに側にいて触れられてるなんて。

副長…苦しいんです。

「…ここに来てくれて…」

口を開いた副長を見上げて。

「…はい?」

いや、違ェな、うん、とか。

何か独り言のように言っていて。

そして。

「いや…、俺に出会ってくれて、…ありがとうよ」

グシャッと撫でられた頭からその手が離れても。

その重みや、温かさが残る。

…あの、副長?!

何か言おうとして口をパクパクさせた私を置いて。

後姿の副長が医務室を出て行く。

「今日は部屋で休め、いいな?」

言い捨てて、耳が赤くなった副長に。

…何から聞いたらいいんだろうか。








真利亜様御題
土方
俺に出会ってくれて、・・・ありがとうよ




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