コトノハ1周年企画御礼リク[11/21]
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「近藤さんったら、少ししゃがんでらして?」
「はい?」
言われるがままに花奈の視線に合わせるように膝を折り少ししゃがみ込むと。
「取れました」
髪の毛に触れた、と思った花奈の手には桜の花びら。
取れたと嬉しそうに笑う花奈だけれど。
クスッと笑って近藤もまた同じように花奈の髪にそっと触れて。
「取れましたよ」
と桜の花びらを見せる。
風の強い日だった。
川岸に咲いている桜が風が吹く度にハラハラと散り、その側を歩く二人の肩に髪に。
落ちて、そしてまた舞う。
「そういえば、昨年もこんなこと」
「ですね、ありました」
ガハハッと笑う近藤に目を細めた花奈。
…そう去年の今頃は私はただの女中だった。
今から1年半前。
毎日のように怪我をこさえて来るこの人を、そんな目にあわせていたのが。
まさか、近藤さんが思いを寄せてた人とは知らず。
毎日手当てをしながら、彼の陽気さや温かさに触れては惹かれていた。
ある日近藤さんを傷つけている相手こそ、その人だということを知って。
『私じゃ、ダメですか?』
泣きながら縋った。
勿論、近藤さんだもの、ゴメンと断られた。
うん、あそこですぐに翻ってくるような人なら好きになどなってなかったと思うもの。
『謝らないで下さい、…近藤さんがあのひとを諦めきれないように私も諦められないと思います。…好きでいさせてください』
微笑むとガシガシと頭を掻き毟って困った顔をしてたけれど。
近藤さんがあのひとを思うように。
私の近藤さんを思う気持ちは同じだと理解してくれたようで。
『…振り向いてはあげられないかもしれないけど』
それでもいいなら、と申し訳なさそうに苦笑したあの日を今もきちんと覚えてる。
どうせ振り向いてはもらえない、というのはわかってたけれど。
近藤さんが彼女のことを諦める日まで、私も近藤さんをずっと好きでいたいって思ったから。
何も気にせずに近藤さんに尽くしてきた。
土方さんには、ちったァ他の隊士らにも目を向けてやってくれ、と苦笑され半分呆れられはしたけれど。
半年が過ぎた頃、近藤さんが何となく私を意識しだしたのがわかった。
ハッキリともしかしたら、と意識したのは去年のお花見の頃。
花見帰りの道すがら、酔っ払って陽気に笑う近藤さんの横を歩く。
その前を隊士の皆さんがやはり陽気に歩いていて。
『花びら、ついてる』
そっと近藤さんが私の髪に触れて優しくつまんで取ってくれた桜の花びら。
『もう直、全部散っちゃうんですね』
儚いそれにため息をつくと。
『来年もまた一緒に見れたらいいな』
それは、私、と?
問いかけようとした瞬間に。
皆から隠れるようにして、繋がれた手。
温かくて大きな優しい手。
何も言えなくて、ただその手に導かれるように歩いて。
あれから少しずつ近藤さんが怪我をして帰ってくる日は少なくなっていった。
今はもう通うことすらなくなって。
だけど、ねえ、近藤さん。
…私たちの関係って…、あやふやでわかりづらいですよね。
少し後ろを歩く彼女の繋ぎなれた手を引いて、桜の道を歩く。
天気も良くて、そして二人ともちょうど非番で。
今日を逃したら去年の約束を果たすことなんかできないかもしれない。
『来年もまた一緒に見れたらいいな』
お妙さんの方ばかり見てたってのに、それでも尚オレを思ってくれた人。
わかってて、辛くないのかな、って思ったけれど。
辛かったに決まってる。
それでもただ微笑んでオレの手当てをしてくれるこの人を意識し始めたのはいつ頃だったろうか。
多分、告白されてからずっと意識はしてたんだ。
…もしもオレが振り向かなかったら、この手は他の誰かの物になっちまうんだろうか。
そう思ったらフツフツと湧く独占欲に。
いつしか彼女の手を握り締めていた。
なのに狡い自分がいて、ハッキリと彼女に告白したことがないのだ。
わかってくれ、とばかりに二人のときを狙っては。
抱き寄せたり、時には唇を重ねたり。
…酷い男だよな、全く。
「近藤さん?」
足を止めたオレに振り向いた花奈がいつもより寂しげに笑ってるような気がして。
思わず抱きすくめた。
「あ、の…」
「花奈さんッ、…ずっとずっと言えなくて、その…」
「…はい」
「好きです、好きになってたんです、なのにそれ言えなくて」
「…はい、っ…はいっ…」
泣き出した彼女をギュッと抱き寄せた。
「オレに、ついてきてくれませんかッ?!」
その一言にゆっくり顔を上げた花奈さんが、優しく微笑むから。
「ケツが毛だるまですが一生幸せにします」
照れ隠しを交えたプロポーズなんてしちまって。
…毛だるまの程度がわからないんですが、とクスクス笑う花奈さんが。
「ずっと、ずっと待ってましたよ」
ニコリと微笑んだ鼻先にまた一つ、花びらが落ちる。
小唄様御題
近藤
ケツが毛だるまですが一生幸せにします
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