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コトノハ1周年企画御礼リク[10/21]

「御用があるとお聞きしました」

晋助様の部屋の襖を少しだけ開けて声をかけると。

「入れ」

低く少し怒っているような声が聞こえて。

何かヘマはしたのだろうか、と頭を巡らせたけれど。

「入れってのが聞こえねえのか?」

その声が益々苛立つのは私がノロノロとしているせいだ。

ヤバイ、先ずは部屋に入ってから考えよう。

「失礼いたします」

部屋に入ると晋助様はいつものように、窓際に腰掛けて紫煙をくゆらせて。

不機嫌な視線を諸に私へと浴びせてくる。

「っ、あの…」

その視線と沈黙に耐え切れずに口を開くと。

「…よォ、テメエは今日どこに行ってやがった?」

「…?、江戸です」

「何しに、だ?」

「えっと…、敵陣、というか真選組の内部を少し偵察に」

いずれは戦わなくてはいけないだろう相手。

その内部調査をしておきたかった。

潜り込むのは至って簡単で。

町娘を装って、子供の頃生き別れた母親を探してくれないか、と御人好しが服を着て歩いているような局長に泣きつけば。

自分も一緒に泣き出して話を聞くと中に通された。

厠へ行くと迷ったふりしてアチコチ歩き回っても、誰も何も言わない。

とんだ阿呆共ばかり。

こんな腑抜けたヤツらじゃ、晋助様の敵にもならないと意気揚々と帰って来たのだけれど。

「尾けられてやがったらしいなァ、土方という男に」

「え?!」

だって、あの人すれ違っても私に無関心だったし、アレ?

「万斉がテメエの護衛に就いてなきゃ今頃ここはあの幕府の犬共に嗅ぎ付けられてココは火の海だったかもしれねェなァ」

う、嘘?!

一瞬青ざめて、けれど。

「何故、万斉さんが?」

私を尾けていた?

「勘違いすんな、万斉にお前の後を追えと命令したのは俺だ」

「晋助様が?!何故です?私を疑ってらっしゃったんですか?!」

「ッチ、疑って欲しいのか?」

「いえっ」

晋助様に疑われたら生きてなどいけない。

父も母も奪ったのは天人。

泣き崩れ一歩も動けずその亡骸の側を離れようとしなかった私の手を引いたのが晋助様だった。

『弔いなら、オレがしてやらァ』

来るか?オレと一緒に。

そう聞かれて頷いた。

あの時から私の全ては晋助様に捧げるつもりで。

「危なっかしいんだよ、テメエは」

「っ、」

「どうにもどっか抜けてやがる」

何一つ言い返すことができない。

だって、私は武市さんのように賢くはない。

また子さんのように、腕があるわけじゃない。

万斉さんのようにキレ者でもない。

できることと言えば…、あれ?

できること、って…何でしたっけ…?

途端に悲しくなってきて、ボロボロと零れる涙を晋助様に見られないように着物の袂で顔を隠すと。

「オレァ、テメエに何かしろ、と言った覚えはねェ。何か勘違いしてねェか?」

「っ、あのっ」

「最初にオレがお前にかけた言葉、覚えてるか?花奈」

「覚えてますっ、ずっと」

「だったら、あのまんまだ。今も昔も。テメエの親の弔いはオレが必ずしてやらァ。テメエにゃ他にできることがあんだよ、コラ」

随分と近くで声が聞こえたようで、そっと顔を上げればすぐ目の前に晋助様がいる。

その近さに後ずさろうにもすぐ後ろに襖。

「オレの帰りを待ってろ」

「晋助様…?」

「テメエを連れ帰ったのは、ただ哀れだったからじゃァねェからなッ」

そっと私の頬を掠めた手はゆっくりと次に唇をなぞる。

魅入られてしまいそう、その紫の瞳に。

いや、とうに私はこの人に魅入られて、そして。

自分自身の命すら捧げようと思っているのだから。

「その目だ、俺のためなら全部投げ打っちまいそうなその目。…気に入らねェ」

…次の瞬間、晋助様は強く私を抱きしめて、そして。

組み敷いていく。

苦しいほどに膨れて弾けて、晋助様の全てを飲み込んでいく、そこにあるのは。

性か、生か。

「この先何があっても、俺のそばにずっといろ…」

その言葉にハッとして見上げると、私を見下ろす形だった晋助様が。

目を細めて、そして…。

俺もテメエのそばで生きてやる、と。

優しく耳元で囁く声に頷いた瞬間に。

最奥へと、深く深く…。

誰かのために死ぬのなではなく生きるということを。

教え込まれた。

…そうか、そのために。

泣き出した私を優しく抱きしめるこの人を、きっとずっと。

いつまでもお待ちしよう。







藤井あやめ様御題
高杉
この先何があっても、俺のそばにずっといろ・・・


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