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コトノハ1周年企画御礼リク[7/21]

「沖田さん、洗濯物お持ちしました」

声をかけるけれど、出てこないその部屋の主。

「入りますね?」

部屋にいるはずなのに、返事もないってことは、きっとまた。

部屋のど真ん中、大の字でふざけたアイマスクで昼寝をする人。

全く、もう、と苦笑しながら。

部屋の隅に洗濯物を置き、押し入れから薄手のタオルケットを一枚出して。

「風邪、引きますよ」

そっと、沖田さんの身体にそれをかける。

その瞬間に。

「…っで」

え?

気付いた時には沖田さんの手が私の手を握っていて。

そして。

「…姉上、どこにもいかねえで下せェ」

アイマスクの下、どんな表情をしているのか。

その切ない縋るような声に、私は思わずそこに腰を下ろす。

聞いたことがある、沖田さんにはお姉さまがいて。

昨年、病気で亡くなったということ。

離してはくれない手とは反対の手で。

沖田さんの柔らかな栗色の髪を優しく撫でた。

いつもは、会えば人のことを。

メス豚だの、何だのと言うくせに。

何か人が嫌がることを探しては、悪戯をしかけてくるくせに。

ああ、こんな一面もあるのか、と切なくなった。

私じゃ、お姉さまの代わりになんかなれないかもしれないけれど。

こんな時ぐらいは、…代わりになってあげても、いいな。

「…ェ…、ウゼェ…」

っへ?!

「髪撫でるの止めて下せェ、ウゼェんで」

は?!

驚いた瞬間に、私の手を離しアイマスクを捲り上げた彼は横になったまま大きな丸い目を私へと向ける。

「あんたが髪なんざ撫でるから、すっかり眠気が吹っ飛んじまったじゃねェですかィ!!責任取りやがれィ」

…と、勝手に人の膝の上に頭を乗せてまたアイマスクをする。

「…固ェな、もうちょい柔らけェもんだろ、普通は」

「っ、イヤなら降りて下さいッ!!」

全くもう、さっきまでの切ない気持ち返せ、このサド王子!!

「姉上は、もうちょっと膝が柔らかかったんでィ」

「違うからね?姉上様じゃないから、私」

「髪も撫でる時ァ、絡まねェように細心の注意を払ってやしたぜ?姉上は」

「だからァ、違いますって」

「…そりゃ、そうだ。姉上になろうだなんて百年早ェでさァ、メス豚にゃァ」

…、何て暴言、何て暴言、何て暴言?!

「お前、さっきそんな風に思ってオレの頭撫でてたろィ」

「…いいえ」

図星ですけど。

「…、似てやしねェや、花奈と姉上は。似てやしねェけど、その香の匂いが…同じなんでさァ」

香の、匂い?

そう言われて懐から取り出した匂い袋。

「…差し上げましょうか?」

「いらねェでさァ、んなもん男が後生大事に持ってたら何言われるか」

「…、だったらたまに貸しましょうか?」

「…、いりやせん、が。頼みがありまさァ、花奈に」

「何ですか?」

「…、ここにいる間はそれを使っててくれやせんか?」

「構いません、気に入ってますし、この匂い」

花のような柔らかな匂い。

陽だまりにいるようで、ホッとする優しい匂い。

「…足りなくなったら言いなせェ、オレが買ってきやすんで」

「はい」

ああ、匂いか、だからさっき私を姉上、と。

そうだったのか、と微笑んだ瞬間に。

「だからと言って姉上には似てやせんから」

フンッと口を尖らせた沖田さんに、気付かれぬように微笑む。

「知ってますよ、すいませんね、姉上様のようなお優しい人じゃなくって」

きっと、沖田さんが慕う姉上様はこの世で一人なんだろうから。

「…花奈は、花奈でィ。…あれだ、ホラ。メス豚、…オレ専用の」

そのまま、甘えるかのように私の膝を抱いて眠りだすから。

どうにも立てなくなってしまって足が痺れてもそのまま3時間、彼の昼寝に付き合った。

…オレ専用って、何よ。

何だかちょっと嬉しくなりながら。







清香様御題
沖田
姉ちゃん、どこにもいかないで


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