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コトノハ1周年企画御礼リク[5/21]

ケンカして飛び出した。

きっかけは、ほんの些細なこと。

『ナイ!!!何でッ?!』

冷蔵庫の中に顔を突っ込み、隅から隅まで見回しても。

昨日買って食べずに大事に取っておいたミルクプリンがどこにもないのだ。

『…銀ちゃん…?』

ユラリと立ち上がり振り向いた先で視線を明後日の方向へと向ける人。

『…花奈が食うなんて思ってなかったしさァ』

引きつり笑いで誤魔化そうとしてるけれど。

『いや、夕べ言ったよね?私の分は朝に食べるからって。神楽ちゃんも銀ちゃんも夕べ自分の分は食べてたよね?!』

『そうだっけ?』

銀ちゃんが、おかしいなァ、聞いてないなァって稲川さんの物真似しながら首傾げた瞬間に頭の中でプチッと何かが切れた音がした。

『いつもそう、いつも!!私が言ったこと何も覚えてないフリして、なかったことにしようとする癖!!』

『いつもじゃねェしッ!!!んな、銀さんいつもいつも悪人なわけないでしょ、花奈に言われてることだって守ってるよ、ちゃんと』

『例えば?』

『、えっと』

『給料日前にパチンコ行かない!!ハイ、行ってるね、コレ!!』

『うっ…、他はちゃんと』

『飲み代が無い時は飲まない!!ハイ、いつもお登勢さんとこにツケて飲んでるね?甘いものは1週間に1度、ハイこれなんて毎日だからアウトだしね?まだまだあるけど、どうする?全部言う?』

大分顔色を悪くした銀ちゃんがショボンとして。

『すいませんッした!!!』

なんて謝ってるけれど、どうせ謝ってるのだって今だけじゃん。

この時の私はもう頭にカッカカッカと血が昇りきっていて。

こうなりゃ全部全部吐き出してしまえ、とばかりに。

『…大体さ、…誰よ。いつか嫁に貰うとか言ってたの』

『…』

『もう、3年半だよ、3年半。後どんぐらい待ったらいい?いつかっていつ?ねえ?!…とうに行き遅れちゃったんですけど?』

ああ、言うまい、言うまい、としていた最後の砦のような台詞。

これを言ったらオシマイだ、って。

ずっとずっと思ってたのに。

とうとう口を出てきたソレは留まることを知らず。

涙と共に押し流してくる。

何も言わずに足元を見ている銀ちゃんに腹が立って。

弁解の一つも言わないその態度が悔しくて。

銀ちゃんの胸元をドンドンと叩きながら叫ぶ。

『どんだけ、嘘つき?口先ばっかり。銀ちゃんさ、私のことなんて適当に扱ってればいいって思ってるんでしょ?この場だけ、ハイハイ、ゴメンネで流しちゃえばいいと思ってるんでしょ、いつも、いつも、きっと!!』

『っ、あのなッ』

そう言うと、私の腕をグッと掴み叩くのを止めさせられて。

『…悪ィ…何も言い返せねえや』

唇噛み締めて辛そうな顔をした銀ちゃんを見て、初めて。

言い過ぎた、ってそう思った。

…最後のは特にそう、言っちゃイケナイコトだった。

結婚を迫って困らせた…、そんな感じだよね。

銀ちゃんは、きっとまだまだそんなの考えてもなかったかもしれなくて。

普段の私なら銀ちゃんといて楽しければ、って、それだけだったはずなのに。

『…ゴメン、頭、冷やしてくる』

銀ちゃんの手を振り解いて逃げ出した。

最低だ、私、言っていいことと悪いことの区別すら出来なかった…。

…壊しちゃったんだ、自分の居場所を…。




散々泣いてしょぼくれて、夕陽もとっくに落ちたというのに。

公園のベンチにお尻が引っ付いてしまったかのようだ。

立ち上がる気力がない。

帰る場所だって…もう、ないから。

なのに。

「ほら、帰ぇるぞぉー」

目の前にぶら下がったスーパーのナイロン袋。

見上げると、差し出したその横から銀ちゃんの顔が覗く。

「立てるか?」

気遣わしげ気に伸びてきた手を呆然と見ていると、無理やりに手を引かれ立ち上がらせられた。

「…イヤ、か…?その、…オレいい加減だし、花奈泣かせてばっかだけど…。でもな、離れたくねェから…」

すっかり冷え切っていた身体は、少し汗ばんだ銀ちゃんに掻き抱かれて…。

「っ、銀ちゃんっ…」

一緒に帰る、と泣きじゃくる私を。

帰ってくんなきゃ困ッから!!!と微笑んで泣き止むまで付き合ってくれて。



「プリン、めちゃくちゃ大量なんですけど」

「…それ全部花奈のだからァ。心して食えよ」

「食えない、てか、食いきれないィィィ」

嘆く私に。

「あ、オマケ」

渡してくれたのは、いつから持っていたのか、それともついさっき買ってきたのか。

可愛らしい花のついたリング。

「…いつか、って…。そろそろ、でいい?」

銀ちゃんの優しさに、また泣けた。







ひなた様御題
銀時
ほら、帰ぇるぞぉー


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