コトノハ10万打企画御礼リク[10/14]
「テメエは何の役にも立ちァしねェな」
攘夷浪士一党に人質として掴まり縄で縛られた私を副長は馬鹿にしたような顔で見ていた。
…ああ、そうだ、そういう人だ。
ヘマして掴まった部下など見捨てるのだろう。
私の首に刀を突きつける攘夷浪士に目もくれることなく。
「ま、待てっ、人質がどうなっても」
「構いやしねえよ」
その冷たい言葉に覚悟を決めて目を閉じた。
そういつだって、あなたは大儀を成すためには多少の犠牲は仕方ないと思える人で。
それがつい3日前、あなたに思いを告げた女であっても。
仕方ない、となるのでしょうね。
『好きです』
返事は無視、だった。
「そのなまくらでコイツ触んじゃねえよッ!!!」
副長の怒鳴り声、そして。
ザシュッという肉の切れる音がして。
目を開けた私に飛び込んできたのは。
目の前の浪士が倒れた瞬間に、頭から血飛沫を浴びた副長が、ニヤリと私を見下ろしている光景。
「待たせたな」
伸びてきた大きな掌が私の頬を撫でる。
私の側に跪き、今まで見たことのない優しい笑みを浮かべて。
その顔を見た瞬間に、心が高ぶるなんてバカですよね。
やっぱり大好き、ってそう思っちゃうのはバカだと思います。
「…待たせすぎです」
涙目で口を尖らした私の縄を解いた副長は。
「悪ィ、怪我はねえな」
ほんの一瞬だけ、私の頭を抱きしめて。
また戦いへと戻って行く。
…あなたの背中を守らせて下さい。
側にあった刀を手に立ち上がり、その広い背中を追いかけた。
「…暫く謹慎だ」
「はい」
全てを成し終えて屯所へと戻る途中で。
そう呟くと泣き出しそうな顔して震えてやがる。
…もっと早く助けてやりたかったんだが。
「…人に心配かけた罰だ」
「?!」
不安げな顔でオレを見上げっから、止まるわけねえ。
腕を引き、その小さな体を抱く。
「副長っ、あ、の」
腕の中で見上げたその目が、唇が。
どれだけ、愛しいかなんて。
お前を失うかも、と思った瞬間に、抑えが利かなくなっちまった。
「…オレの返事も聞かずに逝ってみろ、地獄まで追いかけてって連れ戻してやる」
好きだった。
…オレもずっと。
ringo様御題
土方
待たせたな
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