コトノハ10万打企画御礼リク[2/14]
「私ね、お見合いしたの」
そう告げると沖田くんは口に入れようとしていた団子をポトリと下に落とした。
…ショックだった?
いや、そうは見えない。
いつも通りの飄々とした沖田くんだ。
多分ほんのちょっと驚いたんだろう。
「結婚する気ですかィ」
「うん…、私さ、沖田くんより5つも年上でしょ。…そろそろね、身を固めたら、って母が心配してて、ね。だから、…ゴメンね」
…謝ったって許してなんかくれないだろう。
多分今までうまくいっていて、沖田くんは沖田くんなりに私に優しかった、と思う。
…まァ基本ドSだから、本当にそれなり、だけれど。
だけど…そのほんの少しの優しさの中に、愛は感じていて。
私も、この5つ年下の可愛くて意地悪な彼が大好き、だったけれど。
そうも言ってられない、だって世間で言えば私はそろそろ結婚適齢期らしいんだもの。
親孝行だって、そろそろしなくては。
「今までありがとう、沖田くん。楽しかったよ?」
最後まで笑って手を振ると。
沖田くんは私から目を反らしていて。
ああ、きっと嫌われてしまったのだということがわかった。
当たり前だ、最低な理由で私は沖田くんにさよならを告げてしまったのだから。
背を向け歩き出した瞬間に、甦るのは思い出ばかり。
『好きでさァ』
たった一度だけ、付き合う時に言ってくれたあの言葉。
真っ赤になってた沖田くんを見たのは最初で最後、あの時だけで…。
だけど、この1年あの言葉を思い出しては、私嬉しかったんだ。
ズンズン早歩きしていないと。
誰かに会っちゃうと今ならきっと聞かれちゃう。
『どうしたの?』って。
だって…止まらないんだもの、涙。
なのにそんな私の足を止めるように強く掴まれた腕。
振り向くと、沖田くんが困った顔で私を見下ろしている。
「オレァ、納得してやせんぜ?」
「沖田、くん…、ごめっ」
「謝るくれえなら、オレを振るなんて止めてくだせえ」
口元でフッと笑った沖田くんが放った一言は。
「幸せにしてやるから、オレと結婚しやがれィ!」
驚く私をギュッと抱きしめて、もう一度耳元で甘い甘い言葉。
「…オレにしときなせェ」
ああ、もう断れるわけがない。
だって、本当はずっとその言葉、待ってたんだもの…。
みずたま様御題
沖田
幸せにしてやるから、オレと結婚しやがれィ!
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