To be happy[5/6]
…暖かい手が私の手を握っている感触。
側に誰か、いる?
…神楽ちゃん?
バッと起き上がって、見えた顔に絶句した。
何で…?
「大丈夫?」
近藤さんが心配そうに私の顔を見ている。
「医者は寝不足だろうって…、身体平気?」
「平気、です…あっ」
窓に映るは夕陽…。
「…近藤さん、早く帰って」
そうだ、だって夜には婚約発表があるって。
「何故?」
「だって、今夜大切な御用が」
「いいんだよ」
「良くないでしょう?!大事なことです!!さぁ早く!!」
「大事なこと?花奈が倒れた以上に大事なことなんて無いだろ!!」
泣きそうになりながら、怒ってるその顔を。
見ていられずに、視線を反らした。
「焦ったんだから!!チャイナ娘が屯所に駆け込んできて花奈が倒れたって。わかる?どんだけ、オレ…」
言いながら掻き抱かれて。
…私の肩に顔を埋めて泣く人…。
「…それでもっ」
それでもね、近藤さん。
「あなたは局長であって、そして」
「あぁ、君を思う1人の男だ」
「そうじゃない、でしょう!!!選ばなくちゃいけないのは」
「…嘘など、つけんよ…。オレの心が君にあるんだ。君から離れていけないんだよ。どんなに君の思うとおりにしてやろうって、そう思ったかしれない!けれど、日に日に思いは強くなるんだ…逢えないのがこんなに苦しいだなんて…君はそうじゃなかったのかもしれないけど…」
愛しいと全身で訴えてくれるその抱きしめ方に。
鬼にしたつもりの心が、ガタガタと崩れだす。
「じゃあ、どうしろって言うんです?あなたを好きなまま側にいてもいいのですか?ダメでしょう?だって、それじゃあなたの立場が」
「…ちゃんと、許可貰ってきた」
「え?」
「ここ来る前に、とっつあんの…長官のとこに寄ってきた。嫁にしたいほど好きな女がいるから婚約なんぞできませんって。…以外に始末書一枚で済まされたよ」
少し離れて私を見下ろすその笑顔は満面で。
「…今日オレ誕生日だって知ってた?」
「…うん」
「プレゼント、欲しいんだけど」
「…あ、あのね、冷蔵庫に」
「君が、欲しい」
「近藤さん?」
「嫁に、来てほしい」
そう言って胸元から出した小さな箱には。
私の指にピッタリのサイズの指輪。
…いつの間に…。
泣き出した私をもう一度狂おしいほどに抱きしめる腕の強さに。
「…貰って下さい、…お願いします」
小さな呟きに近藤さんは見る見る涙をこみ上げて。
「幸せに、絶対に幸せにしてみせるから」
そう言って何度も何度も泣きながら口付けてくれた。
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