テンパな人とテンパる人[2/4]
コソコソと植え込みに隠れて、15時を待つ。
総悟のデマに決まってる。
けど、何だ、このモヤモヤした感じ。
15時5分前、…花奈が現れた瞬間。
絶望的な気分になる。
いやいやいや、相手が万事屋とは限らねえだろ!!
もしかして、友達とか、うん、きっと女友達と待ち合わせてんだ。
その内15時を知らすメロディーが公園に響き渡る頃。
…現れたのは、万事屋で。
花奈は嬉しそうにそれに手を振って駆け寄る。
何か楽しそうに話しているが、メロディーが邪魔で聞こえやしねえ。
ックソ、オイ、何楽しそうに話してやがる!!
あああああ、花奈の肩に手なんか回してんじゃねえよッ!!!
回していいのはオレだけ、って。
いや、今そんなん言ってる場合じゃねえって。
花奈は着物の袂から何か小さな箱のようなものを取り出して。
その箱から何かを抓み上げる。
そして、「あ〜ん」と万事屋を見上げると。
その通りにバカ面全開で嬉しそうに口を開く万事屋の口に。
その指先で抓んだ何かを食べさせて。
万事屋の唇に触れた指先をペロッと舐めた…。
うんうんと頷いて、花奈の頭を撫でる万事屋と、それに嬉しそうに首を傾げて笑う花奈。
こちらに向かって歩いてくる花奈と万事屋。
徐々に聞こえてくる二人の声。
「んじゃ、今日も張り切って行くかァ、花奈」
「うん、銀ちゃんお手柔らかにね」
「花奈が勉強熱心だから、銀さん教え甲斐があんだよねえ」
「銀ちゃんが教え上手だからだよ」
「いやいや、上達早ェから、もうオレ負けそうだもん」
「まだまだ銀ちゃんには勝てないよ〜」
な、な、な、何この会話ァァァァ!!!
何かエロくね?
いや大概エロくね?!
何習ってんの?!
あのヤローから何教わったりなんかしてんのッ?!
「ちょっと、待てやァ!!!」
ザッと植え込みから立ち上がって、過ぎ去っていこうとした2人に声をかける。
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