You need Me,Don't you?[3/4]
「土方さーん、いいこと教えてやりまさァ」
「あ?何だ?」
見廻りにも行かずまたフラフラと屯所を彷徨っていた総悟とバッタリ出くわすと。
「花奈の傷、大分目立たなくなりやしたぜ?」
「…そうか」
ホッと胸を撫で下ろす。
あんな傷があっては今後の花奈の将来に響くだろう。
せっかく、人より少し可愛い顔してやがんだし、傷一つでそれが台無しになっては勿体無い。
「そろそろ謹慎解いてやっていいですかねィ」
あの後指示に背いたとして花奈を謹慎処分とした。
屯所内でも稽古の時と飯時以外は自室に引きこもって聞いた話によると写経してるとか聞いたが。
何故写経か、なんて、強くなりたいとマラソンしてるヤツに問うてもまともな答えなぞ帰ってこないだろうけど。
「隊長がいいってんなら、いいんじゃねえ?」
「…じゃー、そうしやーす。けど、土方さん、あんた何で一回も花奈のとこに顔出してやらんねえんですかィ?」
「は?」
「顔の傷一番気になってたのはあんただろィ」
「別に気になんか」
「どっちでもいいですがね、もうあんたに気にしてもらわねえでも、傷があろうとなかなろうとオレが嫁に貰ってやればいい話でィ」
「は?!」
「ああ、先の話しですがね、そう先でもねえでしょう。その内招待状でも配りに行きやすんでがっぽり御祝い用意して待っててくだせェ」
「…いつから、だ?」
「…つい最近でさァ、一度も顔見せてくれねえ冷たい男を想ってずーっと泣いてやがりやしてね。そんなクソニコチンマヨ太郎より、オレのがいい男だろィって口説き落としてやりました」
「って、クソニコチンマヨ太郎って誰のことをッ!!!」
「気になるなら花奈に直接聞いてみたら、いいんじゃねえですかィ?」
ニヤリと笑いながら、その場を後にする総悟の背中を。
それ以上とっ掴まえてその真意を尋ねることは無駄だとわかって。
黙ってそれを見送ったけれど…。
…クソニコチンマヨ太郎…。
オレだろ、それ!!!!
一度も顔見せてくれねえ冷たい男を想って…?
オレのがいい男だろィって口説き落として…。
トクンと撥ねた胸の音はツキンとすぐに痛みを伴う。
自然と足はその部屋へと向かう。
最初はゆっくりと少しずつ速度を増し、そしてとうとう小走りで。
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