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I will be in place for you〜私があなたの居場所になる〜[4/4]

「で、何であんたはこっちに来るの?」

「え?!来ちゃダメなの?!」

驚く勲の顔にこっちが驚くってえの!!

「…風邪うつっから、あんたもあっちに寝なよ?勲」

「やだよォォォ!!だってこんな時でもないと花奈ちゃんの隣に寝られないでしょ?」

そう言うとスルスルと布団に入ってきて花奈の背中を温めるように抱きしめる。

「もう、熱はないみたいだね」

顔を花奈の首筋に埋めて直確認。

「っふぅ?!」

くすぐったさに漏れた声に勲が嬉しそうに笑っている。

「あれ?!花奈ちゃん、感じちゃ、グフォォォォ」

照れた花奈から繰り出される肘鉄は鳩尾にクリーンヒット。

「うつっても知らないから」

「え?だってオレ、バカだから人から風邪もらったことないもん」

…ってか、風邪引いててもそれが風邪って気付いてないだけじゃん、いつも。

最後にあんたらがいつも私の風邪もらっていくんでしょうに。

振り向いて近藤の顔を見れば。

嬉しそうに笑っている。

「バカな子だよ、本当に」

おいで、と手を伸ばせばチクチクした髭が花奈の首筋を這う。

「…ごめんね、勲」

「ん?」

「…あんまり構ってやれなくってさ」

勇が生まれてからはとくに、こうして二人でってこともあまりなくって。

我慢、させてるってのも…本当はよくわかっていて。

「…でも花奈ちゃん笑ってくれてっから」

「え?」

「毎日幸せそうに笑ってくれてっから、オレその顔見てるのがすげえ幸せで。…言ったでしょ?いつか。ここが花奈ちゃんの居場所だって。ねえ花奈ちゃん、今そうなってる?ちゃんとオレら花奈ちゃんの居場所になってるかな?」

聞かなくたってわかってるくせに。

近藤の目があまりに優しいから、涙が零れる。

「…バカッ…あんたはいつだって、…私こそっ」

言いかけた言葉を飲み込むのは。

触れるその唇が塞いでしまうから。

私の方こそ、あんたの居場所になれてるの?

本当は本当は大事だって気持ち、伝え切れていないから。

不安なんだよ、わかってるだろうかって。

その大きな愛ゆえに、返しそびれていないだろうか、といつもいつも不安で。

「…わかるよ?」

「え?」

まるで花奈の心の内を見透かすような近藤の言葉…。

「花奈ちゃんがオレのこと大事にしてくれてるの、いつもわかってる」

女中の仕立てる隊服よりも、アイロンがビシッと掛かっていて。

自分の食事だけは花奈の手作りで栄養バランスも自分の好みもよく考慮されていて。

少し疲れたなって時には。

『おら、ここに寝てみな?』と

手荒いながらもマッサージをしてくれる。

口に出さないけれど、花奈の愛がそこかしこに散らばっていて。

「花奈ちゃん、ありがとう」

慈しむように身体の全部包み込まれて、ポンポンと擦る背中に回る大きな手に。

花奈は甘えるようにそのまま寄り添った。

「勲…、私こそ、…側においてくれてありがとうよ…」

耳を疑うようなそんな言葉に戸惑って。

けれど、嬉しさが隠し切れない。

「…いつも、こんな風に素直に甘えてくれたらもっと嬉しいけどね」

覗き込んでもう一度、この愛しい人にキスをして、そして…。

アレ?

アレェェェェ?!

「花奈ちゃん?」

スースーと寝息を立てる花奈に近藤が呆然とした。

「嘘?!アレェェェェ?!今そういう雰囲気じゃなかったァァァア?!アレェェェェ?!」

「…うるせえな、寝ろ、勲。騒いでんじゃねえ」

ポリポリと頬を掻きながら、寝言のようにそんな言葉を言い放ち、また寝息を立て始める花奈に。

ふぅぅと聞こえぬようにため息を吐いて。

まぁ、いっか…、今日は風邪だもんね。

と、しっかりその胸に花奈を抱き寄せて幸せそうに目を閉じる。




朝方息苦しさに目覚めれば、いつ来たのか真ん中に勇。

そして花奈と勇に腕枕をして、グーグーと眠る勲。

狭いったらありゃしない。

だけど、この狭苦しいけど温かい。

この空間が好きだよ、私。

そっと二人に布団を掛けなおし、朝ご飯の支度へと向かう。

きっと毎度のこと。

今日中に揃って熱を出すだろう二人のために。

粥を作ってやろうと。

うつるって毎度言ったって聞きやしない。

そんなあんた達と家族になれたこと、嬉しくてたまんないんだ。

…私の居場所。

それは、あんた達の笑顔がある場所…。

_________私が笑える場所。






fin

楓様へ

コトノハ五萬打フリリク

茅杜まりも  2013/10/6



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