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I will be in place for you〜私があなたの居場所になる〜[2/4]

「近藤さん、あんた何してやがんだ?」

庭にあるチューリップやらパンジーやら咲き誇る花壇にじょうろで水を巻いている局長の姿に。

土方は憐れむような視線を投げかけて立っていた。

「あ、トシ。これ?花奈ちゃんに頼まれてね」

「いくら頼まれたからって、もう少しどっしり構えててくれよ、示しが」

「トシくん?示しが何だって?」

近藤の影に隠れていてわからなかったのだが、どうやら花奈もそこにいて花壇に種を植えていた。

「…いや、酢飯が食いてえな、って」

「へえ?だったら夕飯は散らし寿司にでもしてやっから、あんたも手伝いな?」

「は?」

「そこに軍手あんだろ?それはめて草むしりしな?あ、総ちゃん、丁度いいところに来たね」

たまたま通りかかった沖田がゲッというように顔をしかめて、こちらへと歩いてきて。

「総ちゃんはさ、そっちのウネにこの種植えて?指半分くらいの深さにだよ?埋めた後パンパンって固めんじゃないよ?芽出てこなくなっから。パンパンしやがったら、あんたの頬っぺたもパンパンにしてやっからね?」

「へーい」

すごすごと沖田もまた花奈の命令に従う。

あの生死を彷徨ってから5年。

近藤と花奈との間に生まれた息子勇(いさみ)。

もうすぐ4歳になる息子はこの春から幼稚園に通っていた。

「勇がさー、花の名前知りたがってんだよ、そしたら母ちゃんとしちゃ、黙ってらんないでしょ?実際にどんな花がどんな風に咲くのか見せてやらないと」

…やはり、そう、息子のためだったのか、と3人はため息をつく。

つい先日は虫の名前が知りたいという勇のために皆で山にキャンプに行く羽目になり。

その間中虫を探しては勇に図鑑と付き合わせて説明をさせられるという面倒くさい作業をさせられて。

この分じゃ泳ぎたいと言われたら海に、秋には秋の虫探しをさせられるんではないだろうか。

それぐらい花奈が息子にベタ惚れなのは傍から見てもわかっていた。

自分に似ている息子を溺愛する母の構図そのもの。

確かに勇はどう見ても花奈の子で、天才肌、何をやらせてもソツなくこなすし、その顔立ちもまた凛と整っていて。

パッと見、近藤に似ている要素はどこにもないのだけれど。

「母ちゃん、ただいまぁ…」

幼稚園バスから降りて屯所の中に入ってきた勇は泣き顔だった。

「…勇っ、どうしたんだい?!誰にやられやがった?!」

「てか、花奈、いや、お母ちゃん。勇、朝とズボンが違ってんだけど?」

近藤がそれを指摘する。

「…またかい」

はぁぁっと大きなため息を漏らすと勇が泣き声を更に強める。

「よくあることだ、勇、気にすんなっ!!父ちゃんなんて、いまだに」

言いかけた近藤をハァツとなぎ倒して、勇の頭を撫でてやる。

「まぁいいさ、勇は母ちゃんに似てるんだ、きっとその内直るさね」

…多分、直んねーよ、と。

土方、沖田は声に出せずに黙々と作業を進める。

「花奈ちゃん、痛いよォォォ」

なぎ倒された勲が土に埋まった顔面を上げた。

「だから、母ちゃんだって言ってんでしょうが!!!」

花奈の側にある二つの泣きべそ顔。

勇の性格は温厚で泣きべそで、それはそれは勲にそっくりで。

「母ちゃん、父ちゃんイジめちゃダメよォォォ!!」

泣きながら勲を庇う勇の姿に誰もが苦笑する。

…実の所誰にも内緒だけれども、花奈は勇が自分に似ているところが好きなわけじゃなくって。

この優しい性格が勲に似ているところが大好きなのであった。





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