未来への予感[1/4]
洗濯物を干していると、やけに感じる視線。
側にいるのは、煙草を吸っている土方さんだけで。
感じるとすれば、それしかないのだけれど。
クルッと振り返ると、その視線は違う方を見ていて。
…アレ?おかしいなぁ、と。
何度かそれを繰り返す、まるで『だるまさんが転んだ』みたいに。
「あの、土方さん?」
「あ?」
「何か、お話とか、あったりします?」
首を傾げてその真意を覗き込む。
だって、煙草もう何本目ですか?
洗濯物も乾く前から黄色になっちゃいますよ?
「別に、ねえっ…」
何故か怒っているような口調に、そうですか、と空になった洗濯籠を抱えて通り過ぎようとしたのを。
土方さんの手がそれを遮る。
「…土方さん?」
見上げたその端正な顔立ちは卑怯だ。
すぐに私の思考回路が停止してしまいそうなほどに、カッコいいんだもの。
側で見てたら頭に血が昇りそうで、視線を反らした。
「…明日の非番、何か用事あんのか?」
「特にありませんけど」
「…だったら、コレ、行かねえか?」
隊服の胸ポケットから二つ折りにされた、チケット?
広げれば最近出来たばかりの遊園地のチケット。
それをただボーッと見ていた。
二枚ある遊園地のチケット。
行かないか?ってことは、私を誘っていて。
で、誘ってくれたのは土方さんで。
ってことは?!
あまり長い事そうしてたのか。
「イヤなら総悟にでも」
と仕舞おうとしたチケットごと土方さんの手を握る。
「っあ?」
「あの、行きたいです、…ひっ…ひじかったかたさんと、アレ…?」
すると土方さんは苦笑する。
「かったかたって何だよ、オレァ土方だってえの」
言わないで、言わないで、自分だって噛んだのわかってるし。
真っ赤になって竦んでしまった私の頭をそっと撫でて。
「朝、7時半に門の前でな」
と楽しそうに去っていく。
それ言うためにきっとずっとここにいてくれたんだ、と思うと。
嬉しくて恥ずかしくて。
1人、きゃーっと身悶えていると、通りかかった局長が憐れそうな目で私を見ていたけれど。
明日はきっと晴れますように。
憧れの土方さんからの初デートの誘いに胸を躍らせた。
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