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永想[4/5]

『…逢いたいなぁって何十回も書いてるんだもん』

花奈の声を思い出す。

今度はすぐ側に住んでいるというのに、逢いに行くのが躊躇われている。

あの男と花奈は一体どういった関係だ?

ただの主従関係にしちゃ、親しすぎて。

花奈はどうかわからなかったが、あの男は確実に花奈のことを…。

「総悟、見廻りはどうした?」

アイマスクをずらされて覗き込んでくる顔は近藤。

「今行っている夢見てやしたが」

「夢じゃダメだろう」

近藤は苦笑し、沖田の横に腰掛けた。

「花奈ちゃんのことか?」

花奈に会ったと聞いた日から沖田の様子がおかしい。

妙に上の空で、いつも以上につかみ所のないフワフワした感じと、時折難しい顔をしているようで。

「晩御飯のおかずのことでさァ」

それ以上の詮索は無用とばかりに立ち上がる。

けれど、ふと湧いて出た疑問。

この男ならどう答えるのか?とそれをブツけてみた。

「近藤さんは何で振られてもまたメスゴリラに逢いに行くんでィ?」

唐突な質問に近藤は一瞬首を傾げ、お妙さんはメスゴリラじゃぁない、と否定したうえで。

「そらぁ、ただ逢いたいからに決まってるだろ?相手にどう思われようと、彼女の顔が見れればオレァそれで幸せでね。毎日頑張れるってもんだよ」

言いながら嬉しそうに鼻の下を伸ばす近藤。

「そんなもんですかねえ」

背を向けて歩き出す。

ただ逢いたい、それでいいのだ。

「見廻り、頑張れよ」

沖田の心の内を見抜いてか、近藤はその背中を笑顔で見送った。






旅籠への道すがら団子を買った。

この間花奈も食べていた団子、土産にしようと。

一本加えて、残り5本をパックに詰めてもらってゆっくりと歩き出した。

目の前から見慣れた顔のカップル。

…あぁ、そういうことか、と立ち止まれば。

「これはこれは沖田さん」

男のほうが上機嫌に沖田に声をかけてくる。

「総ちゃん…」

花奈も笑顔でこちらを見ている。

「今日は花奈と共に休みを取りまして。私が観光案内をしているんですよ、後で屯所も案内しますね」

「総ちゃんはお仕事?」

2人が話しかけてくるのにどう答えたらいいのかわからず。

目を反らした。

「コレやりまさァ、お2人でどうぞ」

花奈の手に持っていた団子を無表情のまま押し付けて歩き出した。

「総ちゃん?!」

花奈の声が背中からかかってくるのを振り払うようにただ前へと足を進める。


案外似合ってるんじゃねえかィ、並んで歩く姿も。

寂しい、いや、悲しいのか?

自分の中のやり場の無い思いを持て余しそうだ。

だからひたすらに歩いた。

歩いて二人から離れてしまえば少し楽になるんじゃないか、と。

そうして。

どれだけ歩いただろう?

多分20分以上歩き続けてようやっと橋の上で足を止めた。





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