戦火に咲く花[3/6]
「珍しいじゃん、晋助がいるの」
小太郎に見張らせて川で行水を浴び戻ってきた花奈が、蝋燭の薄明かりの中に晋助の顔があるのを見て驚いている。
「どうしたの?具合悪いの?」
そう問いただせば、チッと舌打ちしてそっぽを向く高杉。
察してやれよ、花奈。
高杉がいつもデケェ敵倒した後に女を抱きに行くのは、そこで欲を晴らさねェと。
…テメエにぶつけちまったら困っからだぞ。
「で、小太郎がいない…、え?さっきまで一緒にいたのに、まさか?ねぇ、銀時?!小太郎は?!!!」
オロオロと見回すその顔は姉貴の顔。
「心配すんな、花奈。ヅラなら、偵察に行っただけだ。遊か」
言いかけたそれは花奈の手により、首を絞められて止められた。
「ゲホゲホゲホッ、坂本は、まぁいつも通り、村の女にちょっかいかけに行ったみてェだけどよ、ヅラは違うだろ?でも万が一そうだとしてもよォ、許してやれよ、アイツだって男なんだし」
「わかったような口を叩くな、銀時!!小太郎を晋助や坂本と一緒にするな」
すると、クックッと低い笑い声が聞こえてきた。
「何でそこに銀時の名前はねェんだよ?花奈」
「あ?そりゃァ、銀時はあんたらと違って餡子食わしておけば大人しいもんだし。小太郎だってそうさ。晋助や坂本と一緒にしたら可哀想じゃないか」
花奈の言葉に尚一層高杉は笑い転げる。
「何だよ」
怪訝に思いそう問いかければ。
「いやァ、オレァ健全だろォが。影でこっそり誰かサンのこと思ってヌイてるバカよかよっぽど溜まってね」
高杉が喋り終わらぬうちに銀時が花奈の横を素早く抜けて。
高杉の鳩尾を殴りつけていた。
「ック…、ダセェ」
ニヤニヤと後ろに突き飛ばされながらも尚笑う高杉を。
銀時は一瞥して、その場を後にする。
「銀時?!」
驚いたままその背中を見送ってから高杉を睨む。
「何怒らすようなこと言ったの?私にはてんでわからないけど銀時が仲間殴るなんて相当だよ?後でちゃんと謝りなよ、いいね?晋助!!」
へいへい、と口を尖らせて笑う高杉を尻目に銀時の後を追う。
「…わかってねーってかァ。いつまでもテメエはお嬢さんだな、オイ」
オレだって、いつもいつもお前を置いて出かけるのはイヤなんだよ。
その度に銀色狐に掻っ攫われんじゃねェかって。
気が気じゃなくって。
…欲しい、って思って何が悪ィよ?
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