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甘い罠[4/6]

今夜は満月か。

誰が置いたのか、お月見団子。

そんなキレイなまん丸お月さん眺めて、ハァァァっと大きなため息を漏らす。

「おい、何やってんだ」

その声の主は土方さん。

「いえ、あのお月見です」

「そうか」

土方さんも煙草を咥えながらその月を見上げていた。

「土方さん」

思い切って相談してみよう。

「あ?」

「沖田さんって、私のこと好きなんでしょうか?」

「…今更かよ」

バカじゃねェか、と笑い出す土方さんを見て、気付かなかったのは私だけなんだと知る。

「総悟の愛情表現はひん曲がってっからな、けどアレはアレでお前のこと守ってんだぜ?実は」

そう言えば、思い当たる節はいくつかあった。

今日みたいに買出しの時車で送ってくれたりも何度もあったし。

雨が降ってきそうな時はいち早く、

『アンタはトロいんだから、今のうちから動いた方がいいんじゃねェの?』と空を指さし、洗濯物を取り込むよう注意してくれたり。

でも。

「わかりづらすぎます」

そう苦笑すれば

「お前は総悟のことどう思ってんだ?」

反対にそう聞かれて言葉に詰まる。

…嫌いだった、イジワルだし、すぐにイヤラシイことしようとするし。

なのに。

イヤ、じゃなかった…。

触れた唇が優しくて。

返事できなくて、さぁ?と首を傾げて笑う。

土方さん、お願いですから、あの人もうちょっと躾けてくれませんか?

そしたら、私、きっと…。

「なァにやってんでィ!!」

いつの間に来ていたのだろう?

沖田さんが私たちの背後にいた。

「月見だ、…オレはもう戻るけどな」

う、嘘でしょ?土方さん!!それちょっとヒドくない?!

「私も冷えてきましたし」

さっさと部屋へと戻っていく土方さんに習って。

私も足を早めたけれど。

捕まる、その腕の中に。

「アンタは誰を見てるんでィ?」

「え?」

「アノヤローのこと、好きなのか?」

「沖田さん?」

「それだけは許さねェ」

月夜に光るその瞳は昼間のような優しいソレではなく。

荒々しく私の口内へと何かが侵入してきて。

その息苦しさに耐えられなくて。

ドンっと沖田さんを突き放した。

「…こんなのは…イヤです」

こんな荒々しくて怖い沖田さん、イヤです…、一体何でこんなこと。

身体は震えて涙が零れ落ちる。

一瞬私の頬に沖田さんはそっと手を伸ばしたけれど。

それすら怖くて身を竦めれば。

諦めたようにその手をダランと降ろして。

「…いらねェよ、オモチャなんて」

冷たい目は月明かりだけを映し、吐き捨てるようにそう言って沖田さんは去っていった。

イラナイ…オモチャ。

そっか、私だ…。

そう思ったら何でかまた涙が止まらなくなって、自分でも驚いた。

わかる、のは。

私はきっと沖田さんから解放されたということ、だけ。

それだけ…。




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